人間は情報の8割以上を視覚から得ていると言われています。視力はそれほど大切なため、加齢や病気などが原因で見えづらくなると、生活の質までもが下がることも考えられます。国内で行われた研究によると、視力低下によって認知症のリスクが高まるという報告もありました。
老化現象によって見え方の変化が避けられないものもありますが、対処方法はさまざまです。メガネを新調しても、やがて度数が変わってしまうことも自然に起こります。だからこそ見えやすい状態を保つことは、心身両面でのよい影響が期待できるでしょう。
ここでは眼にまつわるさまざまな質問にお答えしますが、誤解されていることも少なくありません。正しい知識を身に付けていただき、ご自身が「よく見える」状態を追求し、保つのがよいでしょう。
※このページは医師監修のもと、さまざまな眼の病気について解説しています。気になる症状がある場合は、自己判断せず早めに眼科を受診してください。

 

こんな気になる症状・見え方ありませんか?

見え方に急な異変を感じたとき、家族の見え方に違和感を受けたとき、質問と回答に当てはまるものがあれば、参考にしてください。

1. 近くのものが見えづらくなった

手元にある文字が読みにくい、手元がぼやけるなどと感じたときに、最も可能性の高いのは老視(ろうし)です。老視とは、眼のピント調節機能が低下して近くにピントを合わせづらくなる症状で、40歳前後で自覚することが多く見られます。
今まで裸眼で過ごしてきた正視や軽い遠視の人ほど、近くの異変に気付きやすいため老視を自覚するのが早いと言われています。よく「老眼」と言われますが、「老視」が正式な名称です。

> くわしくは「老視(老眼)|近くのものが見えづらくなったら?対処方法を解説

 

2. 遠くが見えづらくなった

遠くが見えづらくなったときは、近視(きんし)や仮性近視の可能性があります。
近視とは、近くのものはよく見えるのに対して、遠くのものが見えづらい状態です。ほとんどの原因は角膜から網膜までの距離が正常より長くなることによるものです。
一方で仮性近視とは、眼の調節による一時的な近視を指します。ただし、仮性近視の状態でも眼が緊張したままの状態が続くと、近視が進行する場合もあります。

> くわしくは「近視はなぜ起こる?眼と視力のしくみと遺伝や環境の関係

 

3. 近くも遠くも見えづらい

近くのものも、遠くのものも見えづらいときは、まず老視が考えられます。
老視が当てはまらない子どもなどで見えづらい場合は遠視(えんし)の可能性があります。ただし、子どもの遠視の多くは無症状で、見つかりにくいものです。
遠視とは、近視と逆に、角膜から網膜までの距離が短い場合や角膜や水晶体の屈折力が弱すぎる場合を指します。遠方から眼に入った光が、網膜より後ろでピントを合わせるためにぼやけて映ります。

> くわしくは「遠視|見え方と仕組み、対処法について解説

4. ゆがんで見えるようになった

 

眼の奥には、網膜があります。この網膜がゆがむことで、見え方もゆがんだように見える症状です。
網膜にかかわる以下のような病気の可能性がうたがわれます。

・網膜前膜
・黄斑円孔
・網膜硝子体牽引症候群
・網膜剥離
・加齢黄斑変性症
・糖尿病網膜症
・網膜静脈閉塞症

これらの病気によって、網膜にシワが寄る、または水や血液がたまり盛り上がるなどの異変が起こります。ゆがんで見えるようなら、まず網膜の検査を受けるのが肝心です。

5. 手元の文字が二重に見える

 

 

図のように、通常どおり印刷された文字が二重に見えるときは次の病気の可能性があります。

・乱視
・白内障
・斜視
・甲状腺眼症
・脳こうそく

このほかに、近視や遠視などでも二重に見えることがありますが、急激に出現した場合は斜視がうたがわれます。

> くわしくは「斜視|左右の眼が異なる方向を向く原因と検査、治療法とは?

6. 眼の疲れを強く感じる

眼の疲れを眼精疲労(がんせいひろう)といいます。

・視界がぼやける
・眼に痛みを感じる
・充血する
・眼が重い
・しょぼしょぼする
・まぶしく感じる
・涙が多く出る

などの症状をともないます。

加えて肩こりや頭痛、吐き気やめまいといった体の症状が重なることもあり、 多岐にわたる要因の中から特定するのはやや困難です。
まずはメガネやコンタクトの度が合っていないかもしれません。近年は、パソコンやゲームなどの長時間作業により眼を酷使している人も増えています。このほか、ドライアイや緑内障、白内障、斜視・斜位、眼瞼下垂なども考えられます。
このほか、更年期障害、自律神経失調症、虫歯・歯周病、アレルギー性鼻炎やストレスによる不調が眼に現れることもあります。

> くわしくは「VDT症候群|パソコンやスマホを見続けると眼の疲れや心身の不調を招く

7. 眼の奥に痛みを感じる

眼の奥に痛みを感じる場合は、眼の外傷のほか、急性緑内障発作、視神経炎などの病気が考えられます。
眼の病気以外では副鼻腔炎などが原因の場合や、直前で説明した眼精疲労が強いケースもあるでしょう。
40歳以上の人は緑内障発作の可能性があるので早めに眼科を受診してください。

> くわしくは「緑内障を放置すると失明の恐れもある ~症状と治療法を解説~

8. 色がわかりにくい

色がわかりにくいとき、通常とは色が異なって見える色覚異常には注意が必要です。糖尿病網膜症、白内障、緑内障などが原因で発症することがあります。
これまでと色が変わって見えると感じたら、一度検査を受けて早めに原因を特定したほうがよいでしょう。

9. 首を斜めにして見る

主に子どもが、ものを見る際に首を横にして斜めから見たり、首を傾けたりする場合に弱視、斜視の可能性があります。
いずれも、早期に診断を受けて、治療を開始することが重要です。診断方法や治療方法などをくわしく解説した記事がありますので、そちらもあわせてご覧ください。

> くわしくは「弱視|矯正しても視力の得られない状態。早期治療で回復できる場合が多い」「斜視|左右の眼が異なる方向を向く原因と検査、治療法とは?

10. 視界がかすんで見える

視界に霞(かすみ)がかかったように、白くぼやけたり、まぶしく感じたりするときは以下の原因が考えられます。

・白内障
・ぶどう膜炎
・ドライアイ
・眼精疲労

放置し続けると症状が悪化する可能性があるため、早期に眼科を受診してください。

11. 眼がかゆい

眼のかゆみは結膜炎の代表的な症状の1つです。結膜はまぶたの裏側と白眼を守っていますが、外部から刺激を受けて炎症を起こすと、かゆみにつながります。
結膜炎には大きく分けて、アレルギー性結膜炎やウイルスや細菌が原因の感染性結膜炎などがあります。

> くわしくは「アレルギー性結膜炎とは|治療・予防方法を詳しく解説」「結膜炎(感染性)の原因と対処法|感染を防ぎ他人にうつさないために

12. 急に視野がかける

視野がかけることを視野欠損(しやけっそん)といいます。突然生じたときには、次のような病気が可能性としてあげられます。

・網膜剥離
・糖尿病網膜症
・網膜動脈分枝閉塞症
・網膜静脈分枝閉塞症
・脳こうそく

高齢の方の疾患である加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)では、視野の中央部付近が突然見えなくなる症状もあり、これを中心暗点といいます。
視神経や頭蓋内に生じた疾患でも視野欠損が現れる可能性があります。疾患によって視野の欠け方が異なるので、速やかに診断を受ければ原因となっている病気を特定できるでしょう。

> くわしくは「糖尿病網膜症とは|糖尿病が失明の原因になる恐れも

13. ゴロゴロする・異物感がある

眼に異物が入ったとき、また角膜や結膜の炎症、上皮障害などで眼のゴロゴロ感が生じます。
角膜炎と結膜炎には感染性のもの、アレルギーなどによる非感染性があります。上皮障害は、ドライアイなどが原因のことがあります。
長時間のコンタクトレンズ装用やパソコン・ゲームなどVDT作業は要注意です。眼の乾燥やかすみを伴うこともあるでしょう。

> くわしくは「ドライアイの気になる症状は?治療に有効な点眼薬と日々の対策を解説」「VDT症候群|パソコンやスマホを見続けると眼の疲れや心身の不調を招く

14. 視界に動くモノが見える(飛蚊症)

眼の前に糸くずや虫のようなグレーの点、タバコの煙のような輪っかが浮かんで見え、視線を動かしても遅れて付いてくるような症状を飛蚊症(ひぶんしょう)と呼びます。
加齢によって起こる飛蚊症は、すぐに何かを心配する必要はありません。ただし、似た症状が網膜剥離をはじめ次のような病気によるもあります。

・網膜剝離
・ぶどう膜炎
・硝子体出血
・糖尿病網膜症
・網膜静脈閉塞症

気になる症状があるときは、眼底検査を受けるのがよいでしょう。早めの受診をおすすめします。

> くわしくは「飛蚊症はただちに心配しなくてよい?要注意のパターンと対策を解説

15. 涙が多く出る(流涙症)

涙腺で作られる涙の分泌量が増加すること、涙が排出するルートが阻害されることで、涙があふれ出てきます。一般的には、上気道感染症、アレルギー性鼻炎や結膜炎のほか、ドライアイによる涙道障害なども原因として考えられます。これはドライアイで、眼の表面が乾くとそれに対する反射で涙の分泌が促されるものです。
生まれつきの先天性涙道閉塞もあるが、加齢変化や抗がん剤の副作用でも起こることがある。

16. 光が飛んで見える、チカチカする(光視症)

光視症(こうししょう)は、視野の一部に稲妻のように光が見える自覚症状のことを指します。頭や眼をぶつけたり、指で強く押したりすると見えることもありますが、さらに飛蚊症の症状もある場合は網膜裂孔や網膜剝離の可能性があります。ただちに眼科を受診しましょう。

17. まぶたが腫れる

まぶたのまわりが赤く腫れるのは、一般的に「ものもらい」と呼ばれる症状です。正式には麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と呼ばれ、まつ毛の生え際近くにある脂や汗を分泌する腺やマイボーム腺に細菌が感染して起こります。

このほかに、アレルギーによる眼瞼腫脹(がんけんしゅちょう)はよく見られます。ただし、副鼻腔の感染症、歯など異なる部位の血流から広がり、眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)の場合は危険です。失明につながるリスクもあるため正確な診断・治療が必要です。

> くわしくは「ものもらいの原因と予防法とは|眼の周りを清潔に保ちましょう

18. 眼が赤い(充血、結膜下出血)

眼が赤くなる原因は2つで、充血しているか、出血しているかのどちらかです。
充血は眼の表面にある血管が拡張するもので、主にアレルギー性結膜炎や、ウィルスや細菌が原因の感染性結膜炎が原因です。また、ぶどう膜炎や急性閉塞隅角緑内障などが原因のときは、角膜の周りが青紫色になるのが特徴的といえます。
一方の結膜下出血は、痛みやかゆみはなく白眼全体が赤色に染まります。眼内の毛細血管が切れたり、結膜炎の合併症としておこったりします。

> くわしくは「アレルギー性結膜炎とは|治療・予防方法を詳しく解説

19. 目やにがでる(眼脂)

目やには、涙に含まれるムチンという物質が眼の表面にある不要物などをからめ取ってできます。内容は上皮、血液中の細胞、病原体などです。
日中でも目やにが目立つとき、特に量が多い場合には注意が必要です。
目やにが黄白色でネバネバなときは肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌などの感染がうたがわれます。サラサラとした目やには、ウイルスによる流行性角結膜炎で「はやり目」と呼ばれます。感染力が高いので、家庭内での感染対策が重要です。

両眼で1ヶ月以上も目やにが続くときはアレルギー性結膜炎やドライアイなどの可能性が高いでしょう。ただしほかの病気が隠れている可能性もあるので、眼科を受診してください。


【監修】

大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

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