片方の眼が正面を向いていても、別の眼が異なる方向を向くなど、斜視は両眼の視線がそろわない病気です。
斜視を放置すると、正常でないほうの眼が弱視になったり、両眼で見て立体的に捉える機能が得られなくなったりします。
この記事では
- 斜視の種類と原因
- 斜視の検査方法
- 斜視を治療する方法
を解説します。
斜視の種類や症状によって、適切な治療法が異なるので、参考にしてください。
斜視|左右の眼が異なる方向を向く原因と検査、治療法とは?
片方の眼が正面を向いていても、別の眼が異なる方向を向くなど、斜視は両眼の視線がそろわない病気です。
斜視を放置すると、正常でないほうの眼が弱視になったり、両眼で見て立体的に捉える機能が得られなくなったりします。
この記事では
を解説します。
斜視の種類や症状によって、適切な治療法が異なるので、参考にしてください。
斜視は、目標物に向かって両眼の視線が揃わない状態です。片方の眼が正面を向いていても、もう片方が違う方向を向くため、左右の視線が合いません。
斜視の程度が大きいと、周りの人からの見た目や外見を気にする人が多くいます。しかし斜視の状態では正しく「両眼視」ができなくなり、立体視もできません。そのため斜視を発症する時期が早いと、両眼視機能の発達が妨げられたり、片眼だけ視力が十分に発達せず弱視になる可能性もあります。
※内部リンク:弱視|矯正しても視力の得られない状態。早期治療で回復できる場合が多い
成人の斜視は、眼の疲れや複視と呼ばれる物体が二重に見える症状を伴う場合もあります。子どものころからあった斜視が加齢によって悪化することや、外傷や頭の病気、糖尿病や高血圧などが原因です。急に複視の症状が出たときは血液や頭の検査を受けて、斜視の原因を調べたほうがよいでしょう。
斜視は正しく視線があわない眼の向きによって分けられます。イラストではすべて左眼が正常で、右眼がさまざまな方向を向いていることがわかります。
正常でないほうの眼が
と分類されます。
子どもに多い斜視の種類と特徴は次のとおりです。
種類 | 説明 |
偽斜視 | 赤ちゃんに多く見られ、視線がそれていて斜視のようにみえますが、実際には視線がそろっている状態です。本当の斜視との見分けが困難です。 |
間欠性外斜視 | ときどき目線が外にずれる斜視で、眠いときやぼーっとしているときに見られます。 |
先天性内斜視 | 生後6か月までに発症した斜視で視線のずれ幅が大きめのものです。立体感を得る両眼視機能が得にくい状態です。 |
先天性上斜筋麻痺 | 頭が斜めに傾いている「斜頚」が特徴で、子どもの上斜視の原因として多く見られます。 |
左右の眼にはそれぞれ6本の筋肉(外眼筋)がついていて、バランスを保っています。外眼筋に伝わる脳からの指令のバランスが崩れたり、筋肉の張力のバランスが崩れたりすると、斜視になります。
斜視の原因としては、次のような理由が考えられます。
最近はこのほかにも、スマートフォンの長時間利用による内斜視を発症する患者さんが増えていることも問題になっています。
斜視は、眼位ずれなどによる外見の変化で本人以外が気づく場合もあります。
子どもの場合は、保護者が観察し斜視を疑うような以下の症状が見られたら早めに眼科を受診するとよいでしょう。
両眼の位置(眼位)ずれ | 疲れているときや眠いとき、ぼーっとしているときに眼の位置のずれが大きくなり、目立ちます。外斜視の場合は、遠くのものを見るときに目立ちやすくなります。 |
複視 | ものの見え方が左右の眼で一致しないため、二重に見える症状です。子どもは複視を訴えないことがありますが、成人で発症した場合には感じることが多くあります。 |
頭位異常・斜頸 | ものがずれて見えるのを補正するために、頭を回したり首を傾けたりしてものを見ることがあります。 |
眩しがる・片眼をつむる | 屋外で眩しがって眼を細めたり、片眼をつむって複視を避けようとしたりする行動です。 |
斜位近視 | 成人の外斜視では、片眼より両眼で見たときに視力が落ちる傾向があります。外斜視を防ごうとして、両眼の向きをそろえようとするとピント調節がはたらき近視化するものです。 |
まず通常の視力検査や屈折検査、細隙灯検査、眼底検査などが行われます。斜視が疑われる場合は眼位検査、眼球運動検査、両眼視機能検査などもあわせて行われます。頭の病気や全身疾患を評価する際には、MRIや血液検査が必要となる場合もあるでしょう。
視力検査は眼疾患や弱視の程度、治療効果を判定するため、定期的に行われます。Cの形をしたランドルト環を使う検査方法は3歳頃から可能で、3歳未満の子どもは絵や縞の視標を使った検査が行われます。
屈折検査では近視、遠視、乱視などがないかを調べます。遠視や乱視の程度が大きいと、弱視の原因になることもあるので早期の発見が重要です。
屈折異常が原因でおこる斜視のタイプもあるため、斜視を調べるうえでも欠かせない検査です。
両眼を使ったときの視覚状態を検査し、治療によって維持・改善したかについても調べます。立体視や両眼で1つに見える機能(融像)などの検査は「チトマスステレオテスト」や「大型弱視鏡」などの機器を使用します。
眼位ずれの程度を調べる方法は、両眼をペンライトで照らす角膜反射法や片眼を隠して眼球の動きを観察する遮閉試験などです。
眼位ずれの角度を遮閉試験で調べるときには、プリズムが使用されます。
斜視の治療では眼位ずれや外眼筋の働き、屈折検査、両眼視機能などさまざまな項目を調べた上で、どの方法が適切か判断します。
手術は眼球を支える6種類の筋肉(外眼筋)の位置をずらして、眼の位置を改善するために行われます。眼が外を向いているケースでは外直筋を後ろにずらすために、眼球から筋肉を一度切り離し、後方に縫い付けます。
手術時間は1つの筋肉につき20~30分程度で、一般的には片眼だけ1~2つの筋肉のみを手術するケースが多いです。成人は局所麻酔で日帰り手術ができますが、乳幼児や学童期以下の場合は、全身麻酔で手術が行われます。
斜視の原因となっている遠視や近視を眼鏡やコンタクトレンズで矯正し、正常な両眼視を促すことが狙いです。遠視が原因となっている調節性内斜視や外斜視で、左右の度数が異なる不同視がある場合は有効な方法です。
眼帯、パッチ、くもりガラスなどで不同視のある斜視や弱視の治療を行います。正常な眼を遮閉し、斜視眼を使って物を見る力をつける訓練です。
眼鏡にプリズムを入れて光を屈折させ、斜視のある眼で正常なほうの眼と同時に視標が見えるようにします。
プリズム眼鏡に斜視自体を治療する効果はありませんが、両眼視機能を確保しやすいため、眼の疲れや複視の改善が期待できるでしょう。
成人では、プリズム眼鏡をかけて光を屈折させると両方の眼を使って見えやすくでき、複視や眼精疲労を抑えられます。また小児では正常な眼をアイパッチで覆い、斜視眼だけを使うトレーニングは弱視の治療に有効です。
斜視の原因はさまざまで、遠視や両眼視の異常、視力不良などのほかに、頭部や全身の病気が関連する場合もあります。気になる斜視の症状があれば、原因を特定するためにも早めに眼科を受診したほうがよいでしょう。
斜視は、遺伝と環境の両方が発症にかかわると考えられています。家族に斜視が多い人はより発症しやすいといえますが、遺伝だけが原因ではありません。
【監修】
大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。
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