パソコンやスマートフォン(スマホ)など、身の回りにあふれる機器を長時間使用することで、眼精疲労や頭痛、眼の痛みやかすみ、首や肩のこり、ドライアイなどが増えています。VDT症候群またはIT眼症と呼ばれ、最近ではリモートワークの機会増や子どものスマホゲームの長時間化により、症状を訴える人が増えてきた現代病のひとつと言えるでしょう。
この記事では、
- VDT症候群が起こる理由
- 治療方法と予防方法
- 子どもがとくに気をつけること
について解説します。
VDT症候群|パソコンやスマホを見続けると眼の疲れや心身の不調を招く
パソコンやスマートフォン(スマホ)など、身の回りにあふれる機器を長時間使用することで、眼精疲労や頭痛、眼の痛みやかすみ、首や肩のこり、ドライアイなどが増えています。VDT症候群またはIT眼症と呼ばれ、最近ではリモートワークの機会増や子どものスマホゲームの長時間化により、症状を訴える人が増えてきた現代病のひとつと言えるでしょう。
この記事では、
について解説します。
VDT症候群とは、パソコンやスマホなどの画面(VDT=ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)を長時間見続ける作業によって、眼や身体の疲れを生じ、精神面にも影響が出る病気です。IT(information technology)眼症とも呼ばれます。
2010年ころには1割に満たなかったスマホやタブレット端末の世帯保有率は10年間で急増し、最新の統計ではタブレット4割、スマホは9割弱に達しています。
近年、VDTは私たちの身の回りにあふれるようになりました。(出典:令和3年 情報通信白書)
さらにSNSや動画サイトの普及、リモートワークの定着によってパソコンやスマホ・タブレットなどのディスプレイを見る機会が増えた人が多く、眼の疲れや頭痛などのVDT症候群に悩まされる人が急増しています。
パソコンやスマホなどで長時間作業をしているうちに、以下で示すような症状が現れる人はVDT症候群に当てはまる可能性があります。
眼に現れる、VDT症候群の主な症状は次のとおりです。
適度な休憩をはさまずに画面を見続けていると、一気にさまざまな不調が現れる場合があります。
長時間、画面を見続けることで、筋肉が緊張した状態が続くために痛みやコリが生じる場合があります。首や肩だけでなく、しびれやだるさなどの症状に注意したほうがよいでしょう。
VDT症候群は、精神面にも悪影響が現れることが知られています。
・不安感がある
・イライラする
・食欲不振
・抑うつ状態
・よく眠れない
こうした症状を感じることが、さらに不安やイライラ感を増幅させる場合があるため、ストレスの悪循環を生み出してしまう恐れもあるのです。
画面を長時間見続けることで、VDT症候群のさまざまな症状が起こる理由について解説します。
本来、眼は水晶体の厚さを調節して、見たいものにピントをあわせる機能を持っています。この水晶体の厚さ調整を担うのは毛様体筋です。遠くを見る際にはゆるんで水晶体は薄くなり、近くを見るときには緊張して水晶体はふくらみます。VDTの画面、すなわち眼から近い場所を長時間見続けると、毛様体筋が緊張したままとなり眼の疲れを引き起こします。
スマホやパソコンを使う時間が増え、まばたきの回数が減少すると、眼の表面に涙が十分に行き渡りません。その結果として、眼が乾燥した状態になり、やがて「眼の生活習慣病」とも言われるドライアイとなります。眼にさまざまな不調をもたらすきっかけになるため、注意が必要です。
※「ドライアイ」についての解説はこちら
角膜の最も外側にある角膜上皮と呼ばれる層は、眼を守る役割をしています。涙の不足によって、眼が乾いた状態では、表面についた異物が排除されづらく、まばたきによって眼の表面を傷つけてしまう場合もあります。つまり毎日のVDT作業を繰り返すうちに、徐々に角膜が傷ついていく可能性があるのです。
VDT症候群の治療には点眼薬が使われます。眼の疲れをやわらげたり、眼の乾燥を防いだりすることが狙いです。
眼のほかに、首や肩の筋肉が強く緊張しているケースでは、筋肉の緊張をやわらげる薬を内服して治療する場合もあります。
また、パソコン作業に適した眼鏡やコンタクトレンズを使用して、眼をいたわることも治療方法のひとつです。
日常的にパソコン作業の多い人でも、作業環境を適切に整えたり、休憩をこまめに取ったりするなど対策をすれば、一定程度はVDT症候群の予防が期待できるでしょう。
下の図を参考に作業環境を整えてください。
出典:「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」|厚生労働省
<明るさ>
<パソコンやタブレット>
<椅子、机>
室内の乾燥も眼のトラブルの原因のひとつです。エアコンなどを使用している部屋で、長時間のVDT作業を行うと眼が乾燥しやすくなるため、加湿するとよいでしょう。
心身の負担を少なくするためにVDT作業の連続時間は1時間までとしてください。作業の間に10~15分の休止時間を設けると効果的です。また作業時間内にも、1〜2分程度の小休止をはさむことが推奨されています。
作業していないときは、体操やストレッチなどの運動を取り入れて、緊張をほぐすとよいでしょう。休憩時間に行う軽いストレッチが、VDT症候群の予防に効果的です。首や肩のストレッチのように座りながらでも手軽にできるメニューを取り入れるのがおすすめです。
作業中に使用する眼鏡、コンタクトレンズは度の合っていないものを使うと、かえって疲れを招いてしまいます。眼科で処方を受け、自身に合った適切なものを使用してください。
疲れがひどい、見え方に異常があるなどと感じた場合も、早めに眼科を受診しましょう。
「テレビゲームが好き」という子どもは多く、最近はゲーム機器だけでなく、スマホやタブレットでゲームを楽しむ子もいるでしょう。
しかし画面を長時間見ていると、子どもでも眼の疲れや肩こり、頭痛などの症状を起こすことがあります。
スマホの画面を眼に近づけて長時間見ていると、ものが二重に見える「複視」の症状が現れるスマホ内斜視にも注意しなければなりません。
全国、世界的にみても小中学生を中心に近視の子どもは増えてしまっていて、毎日長い時間テレビゲームで遊んでいると、近視になる可能性が高まると考えられています。
※近視の子どもに関するデータは「近視」の記事を参照してください。
ゲーム時間が30分程度は許容範囲ですが、1時間以上となると要注意です。テレビゲームで遊んだ後は、遠方を見るなど眼を休めるように心がけましょう。
子どもにとって手軽で確実な近視の予防方法は、日光にあたって、外で遊ぶ時間を確保することです。外遊びは、身体の緊張をほぐし、眼のさまざまな症状をやわらげてくれます。すでに近視になっている子どもも、1日に2時間程度、屋外で過ごすことが近視の進行を抑えるのに有効と考えられています。
VDT症候群の治療には、点眼薬や、筋肉の緊張をやわらげる飲み薬などが使われます。パソコンの作業に適した眼鏡やコンタクトレンズの使用も効果的です。適切な作業環境を整えて、作業の合間に休憩や運動を入れると、予防につながります。
VDT作業が長時間に及び眼を酷使すると、脳にもストレスがかかり、自律神経に乱れが生じる可能性があるため注意が必要です。
その結果、精神面でもさまざまな症状が現れ、不眠、食欲減退や過食、めまい、不安感、抑うつ症状などが起こる場合もあります。
【監修】
大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。
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