近くのものはよく見える一方で、遠くが見えづらくなる状態が近視の症状です。近視の度合いが強いほど、遠くのものははっきり見えなくなります。
以前と比べ、子どもの近視が世界的に増えており、問題になっています。
「近視になる原因は?」
「近視を防ぐためにできる習慣とは?」
「メガネとコンタクトレンズの適切な使い方は?」
などの疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、
・近視はなぜ起こるのか
・症状と原因
・近視の矯正方法と注意点
について解説します。
近視はなぜ起こる?眼と視力のしくみと遺伝や環境の関係
近くのものはよく見える一方で、遠くが見えづらくなる状態が近視の症状です。近視の度合いが強いほど、遠くのものははっきり見えなくなります。
以前と比べ、子どもの近視が世界的に増えており、問題になっています。
「近視になる原因は?」
「近視を防ぐためにできる習慣とは?」
「メガネとコンタクトレンズの適切な使い方は?」
などの疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、
・近視はなぜ起こるのか
・症状と原因
・近視の矯正方法と注意点
について解説します。
人間は見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触ってみる「五感」を使って、さまざまな情報を得ています。このうち約80%は視覚によるものと言われ、人間が日常生活を営むには、ものが正しく見えることはとても重要です。
眼の構造を説明する際、よくカメラの構造にたとえられます。主な部位の名前と役割を確認してみましょう。
網膜に映った像の情報が脳に送られて、人間はものを見えたと認識します。レンズの役割をする水晶体の厚みを変えることで、遠くでも、近くのものでもはっきりと見えるようになります。
近視が進行すると、水晶体を厚くしても網膜上にピントが合わない状態になり、像がぼやけて映るのです。
水晶体の厚みが変化しない状態で遠くを見たとき、網膜に正しくピントが合っている状態のことを正視と言います。一方、近視では遠くのものを見たときに、網膜の手前にピントが合います。網膜上ではピントはずれているため、はっきりとは見えません。
近視の度合いが進むほど、より遠くのものは見えづらくなります。
誕生から成長する過程で、人間の眼にどのような変化が起きるかを見てみましょう。
新生児は眼球が小さく、眼軸と呼ばれる眼球の奥行は17mmほどです。ピントが網膜より後ろに合う、軽い遠視の状態です。
身体が大きくなるとともに、眼球や角膜・水晶体なども成長します。眼球が大きくなる分、眼軸も長くなり5歳前後で視力は1.0程度まで成長します。眼軸は16歳頃までに24mm程度に伸びると、その後は一般的に長くなりません。
しかし、なんらかの影響で眼軸だけが伸びてしまうと、ピントを網膜上に合わせることが難しくなり近視になります。
文部科学省が調査する学校保健統計によれば、裸眼視力が0.3に満たない小学生は、この40年間で約4倍に増えました。多くは近視によるものと推察されます。
調査年 | 小学生(%) | 中学生(%) | 高校生(%) |
1979年 | 2.7 | 13.1 | 26.3 |
2010年 | 7.6 | 22.3 | 25.9 |
2021年 | 10.6 | 28.9 | 42.8 |
この10年ほどでスマホが急速に浸透した影響か、直近10年でも近視の子どもの割合が増えています。
世界各国で問題となっている近視の子どもの増加ですが、とくに東アジア諸国では顕著です。シンガポールでは12歳の学童の60%が近視 とも言われ、将来にわたってさまざまな眼の病気にかかるリスクが上がることでも悪影響が心配されています。
<近視の強さと眼の病気のかかりやすさ>
近視度数 | 白内障 | 緑内障 | 網膜剝離 | 近視性黄斑症 |
弱度近視
( -1 to -3D ) |
1.8倍 | 1.6倍 | 3.2倍 | 13.6倍 |
中等度近視
( -3 to -6D ) |
2.4倍 | 2.9倍 | 8.7倍 | 72.7倍 |
強度近視
( > -6D ) |
2.9倍 | 12.6倍 | 845.1倍 |
引用:「The Complications of Myopia: A Review and Meta-Analysis」(Annechien E. G. Haarman)
D(ディオプター)とは屈折度数のことで、近視の強さを表す単位です。裸眼で見える距離(焦点距離)が短いほど数値が上がり、焦点距離1mで-1D、50cmのとき-2Dなどとなります。-6D以上で強度近視と呼ばれます。
軽度の近視でも、近視がない場合と比較すると近視性黄斑性の発症リスクは約14倍に達します。一生のあいだ良好な視力を維持するには子どものときに、近視の発症や進行を予防することが大切と言えるでしょう。
近視の種類は大きく分けて、次の2つです。
単純近視とは、遺伝や環境の影響で引き起こされると考えられ、小学校高学年~中学校で始まることが多く学校近視、学童近視などとも呼ばれます。
視機能障害を伴わずレンズを使うことで矯正できるもので、大半の人はこの単純近視に該当します。
病的近視は、一般的に単純近視よりも早く、幼児期の段階から視力の異常が見られます。極端に眼軸が長くなり、強度の近視となるため、眼鏡などで矯正しても効果が出にくいのが特徴です。
眼球が大きくなり、引き伸ばされた網膜の厚みが薄くなっているため、眼へのわずかな衝撃でも網膜の出血や網膜剥離(もうまくはくり)などにつながります。
発生原因は詳しくは分かっておらず、遺伝の影響とも考えられています。失明につながる恐れもあるため、幼児が見えづらそうにしていたら、早めに眼科を受診してください。
近視の原因は、主に遺伝と環境のふたつの要素が関係していると考えられています。
親が近視なら子どもも近視となる可能性は比較的高いと言われ、遺伝的な要因から近視が引き起こされると考えられています。
一方、単純近視には外的な環境も影響すると考えられます。勉強、読書、パソコンなどディスプレイを見る作業を長く続けていると眼にストレスがかかります。スマホの画面を近くで長時間見続けることも同様です。こうしたストレスが近視の進行に関係する可能性があるのです。
近視が発症・進行するリスクが高い人の傾向をまとめてみました。
<近視リスクが高い人の特徴>
数十年前と比べて、子どもの近視が増えたのは、屋外で過ごす時間が短くなったことも大きく関係していると考えられています。
人間が日常生活の中で、より多くの情報を得るためには視覚は欠かせません。だからこそ眼は酷使され、ダメージが蓄積されがちです。
遠くを見る時間をつくったり、姿勢や室内の明るさを改善したり、眼を休める時間を取り入れたりすれば、近視が進むのを抑え、予防も期待できるでしょう。
近視を防ぐために注意したい生活習慣について解説します。
日光にあたる外遊びが少ない子どもは近視になりやすいとされます。適度に日光にあたり、外で遊ぶ時間を確保することが、子どもにとっては最も手軽かつ確実な近視の予防方法と考えられています。
すでに近視症状がある子どもも、1日に2時間程度は屋外で過ごすことが有効です。建物の陰や木陰であっても、十分な照度を確保できるでしょう。曇りや日没前の時間でも屋外なら1000~3000ルクス程度はあり、一般的な室内よりも明るいため です。
木陰で過ごす場合も、スマホ画面を見つめるなどせず、体を動かして過ごしたほうがよいでしょう。
暗い部屋の中やバス・電車などで、本を読む場合は明るさが足りずに眼によけいな負担がかかりやすいとされます。十分な照度を確保しましょう。
適度な明るさに加えて、正しい姿勢も重要です。背筋をきちんと伸ばし、眼は本や画面から30cm以上離してください。
姿勢が悪かったり、寝ころんでテレビや読書をするのは、近視が進んだり、左右の視力差が出たりする原因になると言われています。眼と画面や本の距離が近くなりやすいことに加えて、対象と眼との距離について左右で差が生じるためです。
勉強や読書、スマホを1時間ぐらい継続したら、数分間は眼の休憩をはさむことが必要です。
近視の矯正には、メガネやコンタクトレンズを使用するのが一般的です。メガネの調整や子どもがメガネを使用するときの注意点について解説します。
近視の人が適切な度の凹レンズをかけると、網膜にピントが合って遠くがよく見えるようになります。単純近視の人が、メガネをかければ正常の視力まで矯正が可能です。
ただし、近視になったからと言って、ただちにメガネやコンタクトレンズが必要になるわけではありません。黒板の字が見えづらいと感じたときなど、不都合が生じたらメガネをかけるとよいでしょう。
コンタクトレンズは角膜の表面に接触させて使うもので、スポーツをするときなどに有効です。左右の視力の差があり、メガネを使いづらい場合に片眼だけ矯正する使い方も可能です。
またメガネレンズのように曇らない点や、視野が広がるなどのメリットもあります。
一方で、
など、コンタクトレンズも万能とは言えません。
フィッティングとはメガネのかけ心地と見え心地の両方を追求し、使う人の顔の形状に沿わせる調整技術のことです。
メガネを使用しているとずり落ちたり、圧迫されて痛くなったりする場合があります。フィッティングを行い、メガネが耳の形に沿うようにし、ツルや鼻パッドなどの高さ、角度、位置を調整します。
メガネにはよく見えて、かつ眼が疲れない、見え心地も大切です。よく見えるかどうかには、視線とレンズ面が直角に交わることと、眼球からレンズまでの距離の適切さが大きく影響します。顔とメガネの距離、位置が常に適切であるように、年1回は購入したメガネ店へ点検を依頼したほうがよいでしょう。
コンタクトレンズに年齢制限はありませんが、レンズの取り扱いや管理に手間がかかります。小学生でコンタクトレンズを使用する場合は、一般的に主としてメガネが使用されることが推奨されています。
子どもは、遊びや運動など体を動かす機会が多く、骨格も成長する時期なのでメガネが合わなくなりやすいものです。正面や横から見てメガネが不自然に歪んでいないか、圧迫されている部分はないかなど、保護者の方が定期的にチェックしてください。大人と同様に年1回は購入店でメガネの点検を受けるとよいでしょう。
近視とは、眼球の形が前後方向に長くなり、眼内に入った光線のピントの合う位置が網膜より前になっている状態を指します。
そこで凹レンズを使って、ピントが合う位置を網膜上に合わせることで鮮明に見えるようになります。
スマホの操作やゲームなど、20cm以内の近い距離で長時間画面を見る作業は眼に負担がかかります。テレビ画面は、2m程度の距離があるため、スマホに比べると眼の負担は少ないでしょう。
子どもは、自分自身では眼の疲れに気づきにくいものです。近くを見る作業をするときは、保護者などがよく観察し、1時間に数分程度は遠くを見るなど休憩を促したほうがよいでしょう
残念ながら、一度変形した眼球が元の形に戻ることはありません。
20cm以内の近い距離での作業(近業という)や1時間以上の近業を継続することは、近視が進行する原因となります。こうした原因を避けて、外で過ごす時間を増やすことがおすすめです。
【監修】
大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。
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