結膜が炎症を起こす結膜炎のなかでも、花粉やハウスダストをはじめとするアレルゲンが原因のものがアレルギー性結膜炎です。
眼の充血や、目やに、眼のかゆみなどさまざまな症状と種類があります。

この記事では、

  • アレルギー性結膜炎の種類と症状
  • アレルギー性結膜炎の治療方法
  • 予防や対処の方法

について解説します。

なぜ起こる?アレルギー性結膜炎

アレルギー性結膜炎とは、花粉やハウスダストなどアレルギーの原因となるアレルゲンによって起こる結膜炎のことを指します。
アレルギーは、異物が体内に入ってくる際に、身体が過剰に防御反応を起こすものです。アレルギー性結膜炎は年齢によらず何歳でも発症する可能性がありますが、最も多いのは40代で、次いで10代に多いことが調査結果で分かっています。

※出典:日本眼科アレルギー研究会有病率調査、2017年

アレルギー性結膜疾患の有病率は48.7%で、結膜になんらかの症状が現れているのは国民の2人に1人に達することになります。

結膜は、白眼の表面とまぶたの裏側を覆う半透明な膜です。眼球とまぶたが癒着しないままで、眼球を上下左右に動かせるのは結膜があるためです。同時に、外部と眼球内部を隔てる役割をしており、アレルゲンのほかウイルスや細菌に触れやすいのが結膜の特徴でもあります。
アレルゲンの影響で結膜が炎症を起こるアレルギー性結膜炎は、ウイルスや細菌などが原因の感染性結膜炎と異なり、人から人へ感染することはありません。

※結膜炎(感染性)に関する情報はこちらの記事を参照してください。

アレルギー性結膜炎の症状

アレルギー性結膜炎は、さまざまなアレルゲンが原因で起こるもので、花粉など季節性のものやハウスダストやダニなど通年性のものがあります。
眼に起きるアレルギー疾患を総称しており、次のような自覚症状が現れます。

  • 結膜の炎症
  • 結膜のかゆみ
  • 充血
  • 眼がゴロゴロする(異物感)
  • 目やに
  • 涙が多く出る
  • まぶたの裏にぶつぶつ(乳頭)ができる

眼が赤くなる

結膜炎によって眼が赤くなるのは、表面にある血管が拡張することで赤く見えて充血することが原因です。結膜が充血すると、白眼の周辺部分が赤くなります。

目やにがでる

涙にはムチンという成分が含まれます。ムチンが眼の表面にある脱落した上皮や血液中の細胞、病原体などを絡めとると、目やにが出るのです。
起床時だけでなく日中も目やにが多く出る場合は注意が必要です。アレルギー性結膜炎の場合、透明または白色でゼリー状の目やにが両眼から1か月以上出続けることもあります。

異物感があり眼がゴロゴロする

異物感(ゴロゴロ感)は、眼に異物が入った場合だけでなく、角膜や結膜の炎症でも起こる症状です。
最近は長時間のコンタクトレンズ装用やパソコン操作(VDT作業)などにより、眼が乾燥するドライアイ症状の場合も原因として多くみられます。

※近年増加しているVDT症候群に関する記事はこちらからご覧ください。

眼のかゆみ

結膜が炎症を起こすと、眼のかゆみを感じます。ときには白眼がぶよぶよ状に腫れることもあります。かゆみ症状が続く場合は、我慢せずに眼科医に相談するとよいでしょう。

アレルギー性結膜炎の種類

アレルギー性結膜炎はアレルゲンによっていくつかの種類にわかれ、症状も異なります。

花粉症

花粉が原因でアレルギーが生じ、結膜炎になるものです。スギ(春)、イネ科の雑草(夏)、ブタクサ(秋)などが有名ですが、実は冬季を除いて一年中なんらかの花粉が飛んでいます。
とくにスギやヒノキなど樹木から出される花粉は、風に乗って100km以上も飛散することが知られています。
花粉アレルギーは、身体が過剰に反応しヒスタミンなど化学伝達物質を放出することが原因です。眼にあらわれるさまざまな症状に加えて、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの鼻症状をともなうことが多いのが特徴です。

 

植物名 花粉の飛散時期
ハンノキ属 2月上旬~6月下旬
スギ 1月下旬~5月上旬
ヒノキ科 3月中旬~5月下旬
シラカンバ属 4月下旬~6月上旬
イネ科 4月上旬~11月上旬
ブタクサ属 8月上旬~10月中旬
ヨモギ属 8月中旬~10月中旬
カナムグラ 8月中旬~10月下旬

※鼻アレルギー診療ガイドライン(日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会)をもとに弊社が編集

 

ハウスダスト

ハウスダストとは、ほこりに混じったダニやダニの死骸や糞、人間のフケや毛、カビなどが含まれ肉眼ではほぼ見えない小さなごみを指します。
花粉と同じく、空中に舞い上がったハウスダストが結膜に付着した結果、結膜炎が起こります。結膜炎の症状も花粉症の場合と同様です。
一方、季節が限定される花粉症と異なるのは、年間を通じて慢性的に続く点です。これは、ハウスダストが常に身の回りにあるためです。
したがって、掃除やダニ除去、換気などの環境整備による抗原除去が重要です。

春季カタル

春季カタルとはアレルギー性結膜炎の慢性重症型のもので、かつては10代までの男児に多かった疾患ですが、現在はアトピー性皮膚炎を合併することが多く20代でも強い症状がみられます。
眼のかゆみが非常に強く、角膜の表面に多くの小さな傷ができるためゴロゴロ感も強いほか、光をまぶしく感じます。さらに上まぶたの裏側に石垣状の凸凹ができるうえに、白い混濁が角膜にできたり、悪化が進むと混濁部分で上皮が剥がれ落ち角膜潰瘍になったりすることもあります。

巨大乳頭結膜炎

巨大乳頭結膜炎は、上まぶたの裏にブツブツが多数発生し、炎症を起こしている状態です。汚れたコンタクトレンズについたタンパク質などに対するアレルギー反応も原因となる場合があります。
異物感、眼のくもり、目やになどが出るほか、重症になるとコンタクトレンズが上方にずれやすくなるのが特徴です。

アトピー性角結膜炎

アトピー性皮膚炎によって、顔やまぶたに皮膚病変がある人の結膜炎で、通年性で慢性的なかゆみや目やにが現れます。

アレルギー性結膜炎の治療と予防

アレルギー性結膜炎の治療と予防は、アレルギーを抑える対症療法と、アレルギー反応が起こらないように改善する方法があります。

点眼薬を使う

用いられるのは抗アレルギー作用をもつ目薬で、ヒスタミンH1拮抗(きっこう)点眼薬とメディエーター遊離抑制(ゆうりよくせい)点眼薬の2種類です。
ヒスタミンH1拮抗点眼薬は、ヒスタミンの作用を直接阻止するので、かゆみの強いときに使用します。一方、メディエーター遊離抑制点眼薬はヒスタミンなどの増加を抑える効果が現れるまでに約2週間かかるため、症状が現れる前から使い始める必要があります。
毎年決まった時期に花粉症が現れている方は、かゆみなどの自覚症状が出る前に目薬を使用すると予防効果が得られるほか、発症した場合の症状も軽く抑えられるでしょう。
また、かゆみを引き起こすヒスタミン受容体を減らす点眼薬も、初期療法としては有効です。重症化した場合はステロイド点眼薬が用いられますが、眼圧上昇の効果があるため眼科で眼圧を測定してから使用する必要があります。

抗アレルギー薬を服用する

点眼薬だけで症状が治まらないときには、抗アレルギー薬を内服することもあります。春季カタルの症状が重い場合には、ステロイドや免疫抑制の点眼薬の使用が有効です。

アレルゲン免疫療法

対症療法ではなく、アレルギーのそのものを改善する方法としては、従来減感作療法や脱感作療法などがあります。
ダニやスギ花粉にアレルギー反応を起こさないように、舌下免疫療法製剤や皮下注射法製剤などが用いられます。

アレルギー性結膜炎の予防法・対処法

アレルギー性結膜炎による、かゆみや充血などの不快な症状をやわらげるための予防方法について解説します。

花粉との接触を減らす

角膜や鼻粘膜が花粉と接触する機会をできるだけ減らす対策が有効です。花粉が多い日や多い時間帯には外出を控えるなどのほか、外出時にゴーグル型のめがねや花粉防止用のマスクを装着して花粉が眼に近づかないようにするとよいでしょう。

カビやダニを除去する

アレルギーを引き起こすカビやダニを除去する工夫が大切です。

  • ゆっくり丁寧に掃除機をかける
  • 布団には天日干しまたは布団乾燥機を使う
  • 空気清浄機を使用する

室温を20度以下、湿度を50%に保ち通気をよくするとダニの増殖が抑えられます。また夏場でも、湿度を70%以下にキープできた室内なら、カビは増殖しにくくなります。
冬は結露がカビの原因になりやすいので、こまめに拭き掃除をしたり、断熱材を使用して結露を防いだりするとよいでしょう。

点眼薬・洗眼薬を使用する

眼に入った花粉やハウスダストなどを洗うには、防腐剤の入っていない点眼薬や洗眼薬を使うことが大切です。
水道水で洗うと、眼の表面から涙を洗い流してしまうため、結果として角膜が傷つきやすくなります。

アレルギー性結膜炎に関するQ&A

アレルギー性結膜炎はどれくらいで治る病気ですか?

抗アレルギー点眼剤を使用し、アレルゲンとの接触を減らすなどの対策を行えば、1〜2週間で症状が治まるケースが多いです。症状が長引く場合は、他の病気も合併している可能性があるので眼科を受診しましょう。

アレルギー性結膜炎が他人にうつる心配は?

アレルギー性結膜炎が人から人へと感染することはありません。ハウスダストや花粉などのアレルギー物質に接触することが原因のため、ウイルスなどで起こる感染性結膜炎とは異なります。

アレルギー性結膜炎でコンタクトレンズは使用できますか?

結膜炎の症状があるときはコンタクトレンズを装用しないか、もしくは装用時間を減らしたほうが無難です。
コンタクトレンズを装着している間は、レンズについたタンパク質や花粉を眼に触れさせ続けてしまうことで、結膜炎が悪化するおそれがあるからです。
結膜炎が悪化すると眼表面へのたんぱく分泌が増えるため、さらにコンタクトレンズが汚れやすくなります。その結果、アレルギーがさらに強まるという悪循環にもつながる恐れがあります。

 

 

【監修】

大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

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