感染性結膜炎は、外部と眼球の内部をへだてる役割をする結膜が細菌やウイルスなどにより炎症を起こした状態です。免疫が低下した状態では症状が悪化しやすく、感染力の強いウイルスにかかった場合は他人への感染を防ぐために自宅療養が必要となるため、注意が必要です。
他の人にうつしてしまうリスクのある点が、花粉やハウスダストが原因で起こるアレルギー性結膜炎と異なります。

この記事では、

  • 感染性結膜炎になる原因
  • 主なウイルス性結膜炎の種類
  • 治療方法や感染拡大を防ぐための方法

について解説します。

感染性結膜炎とは

 

結膜は、イラストで示したように白眼の表面とまぶたの裏側を覆っている半透明な膜です。上下左右に眼球を動かせるのは、眼球とまぶたが癒着していないためで、結膜が外部と眼球内部を隔てる役割をしているおかげでもあります。
結膜炎は、結膜が細菌やウイルスなどにより炎症を起こした状態です。昔から患者数が多く眼の代表的な疾患のひとつですが、感染性の結膜炎が流行する可能性もあります。「よくある病気だし、症状が軽いから大丈夫」と自己判断せず、気になる症状がある場合は眼科を受診しましょう。

感染性結膜炎になる原因

そもそも結膜は、細菌やウイルスなどが眼に侵入するのを防ぐ役割をしています。異物を排除しようとする結膜の防御反応の結果、眼が充血したり、目やにが出たりする結膜炎になるのです。
まぶたを開いている間、結膜は外部にさらされ続けるため刺激を受けやすいという特徴があります。さらに異物が溜まりやすい袋のような構造をしています。
ただし、普段は細菌やウイルスなどが触れた程度では炎症は起こりません。眼を強くこすって結膜に傷をつけた場合や眼が「ドライアイ」で傷つきやすい状態の場合には、細菌やウイルスなどが貼り付いて炎症を引き起こします。
細菌やウイルスのほか、花粉やハウスダストなどアレルゲンが付着してアレルギー性結膜炎にかかる人も多くいます。

※アレルギー性結膜炎に関しては、こちらをご覧ください。

主なウイルス性結膜炎

ウイルスが原因で起こる結膜炎の種類と症状について紹介します。

流行性角結膜炎(はやり目/EKC)

感染力が強いため俗に「はやり目」と言われます。8型、19型、37型などのアデノウイルスに感染して起こる結膜炎です。角膜炎を併発する場合もあります。
自覚症状としては眼の充血や目やに、涙、眼痛、リンパの腫れなどがあらわれます。

急性出血性結膜炎(AHC)

急性出血性結膜炎は、主にエンテロウイルス70とコクサッキーウイルスA24変異株が眼に感染して起こります。充血、目やに、ゴロゴロ感などがあらわれ、白眼などで薄い出血が急性で認められるのが特徴です。伝染力が強く、かつて世界中で流行したこともありますが、近年日本では大きな流行は起きていません。
流行性角結膜炎より症状が軽く、角膜炎の併発が起こることも少ないでしょう。

咽頭結膜炎(プール熱/PCF)

プールを介して子どもに流行することが多いため「プール熱」と呼ばれる、3型などのアデノウイルスの感染で起こるのが咽頭結膜炎です。
眼の充血、目やになどの症状は流行性結膜炎より弱いものの、のどの痛みや39度以上の発熱が現れるため注意が必要です。

ヘルペス性結膜炎

単純ヘルペスウイルスが眼に感染して起こる結膜炎で、眼のほか皮膚、口、唇、性器などに小さな水疱が繰り返し発生し、痛みも伴います。これらの症状は主に初発感染で見られ、とくに子どもに多い傾向があります。角膜上に樹枝状の病変を作るのが典型的な特徴です。片眼だけ発症する場合が多く報告されています。

感染性結膜炎の予防法・対処法

ウイルスや細菌が原因で起こる感染性の結膜炎に対しては、免疫機能が低下している人などは特に注意する必要があります。ウイルス性結膜炎の種類によっては感染力が非常に強いタイプもあるので、感染してしまったら家族をふくめ、ほかの人にうつさない対処も大切です。

手をこまめに洗って感染を防ぐ

ウイルス性結膜炎の多くは、感染している人が眼をこすったあとの手指から感染します。これは、涙や目やににも多くのウイルスが存在するためです。
したがって、汚れた手で眼を触らないことが大切で、眼をこするのも避けましょう。予防のため、および他人への感染を防ぐため、手を流水と石けんでよく洗い、特にコンタクトレンズの着脱時は手洗いを徹底してください。

目薬を使う

流行性角結膜炎や咽頭結膜炎などウイルスに対応する薬はないので、炎症を抑え、細菌による二次感染を防止する抗生物質の点眼薬の処方を受けることが大切です。点眼前後の手洗いも欠かさず行ってください。感染していないほうの眼を守るため、感染している眼だけに点眼するようにしましょう。
ただしヘルペス ウイルスに対しては抗ウイルス薬が開発されているので、ウイルス増殖抑制に効果がある眼軟膏や内服薬を使用します。

プールでゴーグルを使う

咽頭結膜炎(プール熱)は、プールの水を介して他の人の体内にウイルスが侵入することでも感染します。対策としてゴーグルを使用し、眼が直接プールの水に触れる機会を減らすことが有効です。なお眼を水道水で洗う「洗眼」は、涙が洗い流され角膜が傷つきやすくなるため避けましょう。

ウイルス性結膜炎に感染したら

ウイルス性の結膜炎に感染した場合、他の人にうつさないための行動が求められます。

自宅療養する

流行性角結膜炎や咽頭結膜炎は感染力が強く「第3種学校伝染病」に指定されています。そのため、1週間~10日間は感染を防ぐために自宅療養しなくてはなりません。登校・登園を再開する前には、「感染力が低下し、他人にうつす心配がない」という医師の許可が必要です。
大人でも人と接する仕事は感染させる可能性が高いので療養するのが基本的な対応となります。

家族間の感染をさけるために

家族間での感染を避けるには、感染している人の触ったもの、使ったものをこまめに消毒・掃除する必要があります。

<主な対策>

  • タオルの使用を止めて、ペーパータオルを使う
  • 触ったものをアルコールで拭く
  • 感染している人のお風呂は最後にし、浴槽や蛇口の掃除を行う
  • 洗濯物は他の家族と分けて、手洗いする

お風呂の残り湯などを介して感染する可能性もあるため、さまざまな注意が必要です。

結膜炎の合併症

結膜炎が悪化しても、眼球内部にまで影響することは多くありません。しかし合併症をともなうと視力に悪影響が残るケースもあります。合併症を起こさないために、結膜炎を早期にしっかり治す必要があります。

混合感染

結膜炎になったときは、本来備わっている感染防御機能が働きにくく別の細菌やウイルスにも新たに感染しやすい状態です。これを混合感染といい、アデノウイルスなど強いウイルスにかかると治癒まで長引く可能性が高くなります。

角膜混濁

角膜の表層部分は結膜とよく似た性質であり、結膜炎が重症になると角膜に混濁を作る場合が見られます。また混合感染のときに、まれに角膜の濁りが原因で視力障害が残ることもあります。

ドライアイ

結膜に強い炎症が起きると、治ったあとも涙の分泌が少なくなります。そのため、眼が乾きやすくドライアイになりやすいので注意が必要です。

※ドライアイについての記事はこちら

感染性の結膜炎に関するQ&A

結膜炎が他人にうつるのはいつごろまでですか?

ウイルス性結膜炎の種類によって異なりますが、アデノウイルスの感染力は特に強く、家具などに付着した状態で約10日間は感染力を維持するほどです。したがって結膜炎の症状が治まっても、医師の許可が得られるまで学校や仕事は休まなければなりません。

結膜炎の原因にストレスは関係しますか?

結膜 が炎症を起こすかは免疫力と関係があり、ストレスは免疫力の大敵とも言われます。免疫力を高めるために、バランスの良い食事、十分な睡眠、軽い運動を心がけましょう。

結膜炎の初期症状で注意することは?

結膜炎の主な初期症状は、まぶたの腫れ、結膜の充血やむくみなどです。その後目やにが出始め、眼瞼結膜に小さなぶつぶつとした乳頭が現れます。放置するとできものが大きくなり、結膜から角膜に血管が侵入して悪化を招くので、重症化しないうちに眼科を受診してください。

 

 

【監修】

大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

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