体内に潜む単純ヘルペスウィルスが角膜に感染することで角膜ヘルペスが起こります。主な症状は涙が出る、まぶしい、ゴロゴロ感、見づらい、黒眼のまわりの充血などです。
抗ウイルス薬などによって、適切な治療を継続することが大切です。再発を繰り返しやすく、場合によっては視力低下に悩まされる場合があります。

この記事では、

  • 角膜ヘルペスの種類と症状
  • 上皮型・実質型の治療方法
  • 角膜ヘルペスを予防する方法

について解説します。

角膜ヘルペスとは

角膜にヘルペスウイルスが感染することを角膜ヘルペスといいます。ヘルペスウイルスには9種類ありますが、人間に関係するのは単純ヘルペスウイルス(HSV)と水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の2種類です。
多くの人が、子どもの頃にヘルペスウイルスに感染し、一度感染したら症状が消えてもウイルスは体内に潜伏し続ける性質があります。イラストのように3本にわかれている三叉(さんさ)神経にヘルペスウイルスは潜伏しており、発熱やストレスなどがきっかけで再活性化されると角膜に病巣を作るのです。

ヘルペスと聞くと、角膜ヘルペスのほかに口の周りにできる口唇ヘルペスや陰部にできる性器ヘルペスがよく知られています。これらは病変部に直接触れると、他人にうつす可能性があります。
またヘルペスは再発を繰り返すことが多く、視力低下や失明につながる可能性もあるため、その都度しっかり治療しなくてはなりません。

角膜ヘルペスの種類と症状

角膜炎が起こる場所によって、角膜ヘルペスは上皮型、実質型、内皮型に分類されます。一般的によく見られるのは上皮型と実質型です。
角膜ヘルペスにかかると涙が出る、まぶしい、ゴロゴロ感、見づらい、黒眼のまわりの充血などが主な自覚症状として現れます。ただし、症状は片眼のみに現れることが多いでしょう。

上皮型

角膜の表面にある上皮層に症状が出るタイプです。潰瘍の形状から樹枝状(じゅしじょう)角膜炎と呼ばれます。
病変部をこすり取ってウイルスの有無を確認して確定診断を行いますが、特徴的な潰瘍の形から細隙灯顕微鏡の観察で診断できることも少なくありません。

実質型

実質層とは、上皮よりも内部で角膜の中心にある層です。免疫によるウイルスへの防御反応から炎症が起こるもので、炎症部分の角膜がまるく腫れてにごるため円板状角膜炎と呼ばれています。
表面にある上皮型の角膜炎が再発すると、実質型に移行して角膜混濁による視力低下などが生じる場合もあるため注意が必要です。

角膜ヘルペスの治療

角膜ヘルペスの治療には、抗ウイルス薬や抗菌薬が用いられます。回復には、医師の処方に従って正しい治療を継続することが大切です。

上皮型の治療

上皮型では、ヘルペスウイルスの増殖を抑えるために抗ウイルス薬のアシクロビルの眼軟こうで治療します。細菌感染が起きないように抗菌薬の点眼もあわせて処方されることが一般的です。
眼軟こうは1日5回、下まぶたを引いて塗布してから眼を閉じ、薬剤が全体に広がるのを待ちます。2週間程度の継続が必要となるでしょう。

実質型の治療

実質型では、ウイルス増殖と炎症を抑えるための抗ウイルス剤に加え、ステロイドの点眼薬も併用します。ステロイド薬は正しく使用しないと、角膜の病変が悪化してしまう恐れがあります。
角膜ににごりが残ると視力回復が難しくなるほか、視力が著しく低下した場合、角膜移植が必要となる場合もあるので注意が必要です。

角膜ヘルペスの予防

ヘルペスウイルスは症状が消えた後も神経の奥に潜伏を続けるため、2~3年程度で再発する事例も多く報告されています。
再発を完全に防ぐ方法はありません。ただし体調不良によって再発するケースもあるため、規則正しい生活を送ることが予防につながると考えられます。

角膜ヘルペスに関するQ&A

角膜ヘルペスの原因はなんですか?

単純ヘルペスウイルスが角膜に感染し、免疫反応が起こることが直接的な原因です。ヘルペスウイルスそのものは、多くの人がすでに感染しており平常時は体内に潜んでいます。ストレスや発熱などの体調不良が引き金となって角膜ヘルペスが発症します。

角膜ヘルペスが人にうつる恐れは?

ヘルペスは病変部に直接触れることで他人にうつる可能性がありますが、単純ヘルペスによる眼の病気が人から人へ感染するケースはあまりありません。
自分自身でも片眼に発症したものが、もう一方の眼にうつることは稀です。感染力が強いウイルス性結膜炎などと異なり、仕事や学校を休む必要はないでしょう。

角膜ヘルペスは治らないのでしょうか?

角膜ヘルペスは、抗ウイルス薬により適切な治療が可能です。ただしヘルペスウイルスは体内に潜み続けるため、再発する可能性があります。再発を防ぐためにも、体調を崩さないよう規則正しい生活を心がけてください。

 

 

【監修】

大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

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