マスクの着用やリモートワークの増加から、ドライアイの人が増えていると言われます。
パソコンやスマートフォンを使う時間が長い人は、目の疲れを感じる場面も多いのではないでしょうか。

「涙がしっかり出ているから大丈夫では?」
「ドライアイを放っておくとどうなる?」
「ドライアイへのよい対策はある?」

などの疑問に答えるため、この記事ではドライアイの

  • ドライアイはどのような病気か
  • 症状と原因
  • 治療法や普段からできる対策

について解説します。
長時間の仕事や勉強後に目の不調、特に眼の乾きや見え方が気になるという方は、参考にしてください。

ドライアイとは

ドライアイは涙の量が不足したり、涙が眼の表面で均等に行きわたらなくなったりして起こる眼の疾患です。
眼を保護する役割を担う涙が不足することで、眼の表面には傷がつきやすくなります。また眼が疲れやすくなるほか、視力の低下といった症状も起こりやすくなります。
ドライアイになる原因はさまざま指摘されていますが、おもに

  • エアコンの長時間の使用
  • パソコンやスマートフォンの長時間の使用
  • コンタクトレンズの装用者の増加

などの影響により、昨今患者数が増加傾向にあると言われています。
眼の生活習慣病とも言われるドライアイの症状が見られる人は、適切な治療を行うため、早めに眼科医を受診したほうがよいでしょう。

涙は油層・水層・ムチン層の3層構造

眼を異物や菌から守る涙は、3層の構造から成り立っています。

一番外側が「油層」で、役割は水分の蒸発を防ぐことです。
中間層の「水層」は、角膜や結膜に栄養を届けています。
目にもっとも近い「ムチン層」は、涙の層全体を安定させる役割を担っています。
まばたきをすることで、眼の表面が潤いますが、涙が足りない場合や、蒸発しやすい状態だと眼の表面がすぐに乾いてしまい、傷つきやすい角膜が露出してしまいます。

ドライアイのおもな症状

ドライアイには、眼の乾きや疲れのほかにも、様々な症状があります。
ドライアイが疑われる代表的な症状について解説します。

眼が疲れやすいと感じる

涙が減ると、眼は疲れを感じやすくなります。
眼の疲れを感じたときは、表面の乾きを感じていなくてもドライアイになっている可能性があります。「ただの疲れ」と自己判断せずに、早めに眼科を受診することをおすすめします。

眼が乾き、不快感がある

スマートフォンやパソコンを使う時間が増えると、まばたきの回数が減少すると言われています。まばたきが減ると眼の表面に涙が十分に行き渡らずに「乾き」を感じる場合があります。

かすんで見える

もともと視力がよくても、「ものがかすんで見える」のは典型的なドライアイの症状と言えるでしょう。
涙の分泌が不安定だと、風景がかすんだように見えることが知られています。近年はドライアイが原因で視力が低下してしまうケースも報告されています。

ドライアイの原因

「眼の生活習慣病」とも言われるドライアイの原因は環境の影響が大きいと考えられています。このほか加齢や病気によるもの、ライフスタイル・生活習慣が原因となるものもあり、さまざまです。
要因別に詳しく説明しましょう。

外的な環境によるもの

パソコンやスマートフォンの画面に集中しているとまばたきの回数が減り、眼の表面が乾きやすくなります。同様に冷暖房を使った室内に長くいても、眼は乾燥します。
コンタクトレンズの長時間の装用がドライアイの原因となる場合もあるでしょう。
また緊張しているときに働く交感神経は、涙の分泌をおさえることが知られており、ストレスがかかった状態はドライアイになりやすいとも言えます。

ライフスタイルや生活習慣に起因するもの

ライフスタイルや生活習慣が原因でドライアイになる可能性も指摘されています。
● 夜型生活
● 食生活
● 運動不足
などです。
夜は日中より涙の分泌量が減る傾向にあると言われます。また夜間に使われる蛍光灯などの人工的な光は、自然光に比べて目にかかる負担が大きいとも指摘されています。

加齢による涙の変化

分泌される涙の量は年齢とともに少なくなるため、眼が乾きやすくなります。また涙の質にも変化が起こり、油分が減ることも眼の乾燥につながると言われています。
このように加齢もドライアイの原因だと言えるのです。

免疫疾患が影響する場合もある

シェーグレン症候群など免疫が自分を誤って攻撃してしまう病気により、涙腺が異常を起こすことでドライアイを発症するケースもあります。
病気としては中年女性に多く、眼だけでなく口や鼻の粘膜が乾燥するのが特徴です。

眼科での検査方法

ドライアイの検査では、眼が乾く、眼が痛む、かすむなどの症状の確認に加えて、以下の表のような検査が行われます。
涙の量の減少や質の低下、眼の表面の状態をチェックするためです。比較的短時間で終わり、検査で強い痛みをともなうものはありません。

 

検査名 目的 検査方法
BUT検査 涙の質(安定性)を調べる BUTとはBreak up timeの略で、まぶたを開いてから、眼の表面にある涙の層が乱れるまでの時間。
BUTが5秒以下でドライアイが疑われる
シルマー試験 涙の量を調べる まぶたに専用のろ紙をはさみ、5分間でどのくらいの長さが濡れるかを調べる

ドライアイの治療法

ドライアイのおもな治療法には、点眼液によるものと、涙の出口に栓をする「涙点プラグ」があります。

処方された点眼薬を継続して使用する

ドライアイの症状が軽い場合は、以下のような点眼薬が用いられます。
代表的な点眼薬は

  • 涙液を追加するもの(人工涙液)
  • 涙液を安定させ、角膜の障害を改善するもの
  • ムチンや涙液の分泌を促進させるもの

などです。

涙点プラグにより涙をためやすくする

涙の排出口を涙点と言います。涙点に栓(涙点プラグ)をすると、涙の排出を抑えて眼の表面に涙がたまりやすい状態になります。
涙点プラグ治療は近年、医療保険の適用対象となりました。さまざまな大きさやデザインのなかから、涙点のサイズに合ったプラグを選びます。

ドライアイ対策として日常でできること

眼の乾きや疲れを感じたら早めに眼科を受診することが大切です。ただし、ドライアイの予防や悪化を防ぐために日常生活から取り組めること、改善できることはあります。
日々の習慣から見直してみましょう。

意識してまばたきの回数を増やす

スマートフォンやパソコンの画面に集中すると、まばたきの回数が減少するだけでなく、しっかり目を閉じきれていないまばたきが多くなると言われています。意識的に目をつぶって、涙の分泌を促すことが大切です。また、目安として30分のうち3分程度は画面から目を離す、他の作業を行うなどして、眼をしっかり休めるようにしましょう。

画面を目線より下に置く

目線が上に向くと、涙はより蒸発しやすくなるため眼が乾燥する傾向にあります。目線を下に向ければ、まぶたを大きく開かずに済むので、画面の高さを調整して涙の蒸発を防ぎましょう。

目に優しい設定にする

パソコンやスマートフォンのディスプレイが明るすぎたり、文字のサイズが小さかったりすると、眼に必要以上の負担がかかります。適切な明るさに設定し、文字のサイズを大きくすることで薄目にしなくても読みやすく調節してください。

加湿器を使う

空気の乾燥で眼が乾くのを防ぐために、とくに冬場など室内が乾燥しやすい時期は、加湿器や濡らしたタオル、お湯の入ったバケツなどを置いて室内の湿度を調整するとよいでしょう。湿度の目安は50~60%です。
また空調の風が直接、眼に当たらないように、風向きや自分自身の作業する位置を変えるのも効果があります。

夜更かしを避ける

質のよい睡眠は涙をコントロールし、自律神経を整えるのに役立ちます。夜は涙の分泌量も減るので、しっかりと休んで目をいたわる時間を確保しましょう。

コンタクトレンズの長時間装用を避ける

コンタクトレンズは眼科医から指示のあったケア方法や使用期限、装着時間を守って使いましょう。過度な連続装用などは、眼に傷がつく、眼の疲れを感じる原因となります。
とくに夜間は、目薬を使用するなど乾燥をおさえて、コンタクトからメガネにかえることをおすすめします。

蒸しタオルで目を温める

蒸しタオルを目元に当てると、マイボーム腺の詰まりが改善し、眼を守る油分が分泌されやすくなるため、ドライアイの対処法として有効と言われています。
温めた効果で、血行がよくなり筋肉の緊張もほぐれます。眼を休めるうえでも効果的な方法と言えます。

まとめ

ドライアイは放置すると、視力低下や角膜感染症の原因になる可能性があります。

ドライアイによる目の疲れは、やがて頭痛や肩こりにつながり、集中力の低下を招くケースも考えられます。眼の渇きやかすんで見える症状などを感じたら、早めに眼科医を受診し治療を始めることをおすすめします。

重症化を防ぐには、点眼治療をはじめ適切な治療を行うことが大切です。また、日頃から眼に負担のかからない生活習慣を心がけてください。

 

 

【監修】

大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

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