白内障は加齢などにより、眼の中にある水晶体がにごる病気です。年齢とともにその発症率は上がり、早い人は40代で発症し、80代以上ではほとんどの人に症状が表れます。

「白内障の症状はどう表れる?」
「自分で白内障かをチェックする方法はある?」
「手術を受ければ治る病気なの?」

などの疑問に答えるため、この記事では、

  • 白内障はどのような病気か
  • 症状と原因
  • 白内障の治療法や進行を抑える方法

について解説します。
眼内レンズや手術方法の進歩により、現在は安全に、短時間で白内障の手術を行えるようになりました。白内障の早期発見、早期治療のためにも、40代以降の方は定期的な眼科の受診をおすすめします。

白内障とは

眼の中にある水晶体は、レンズの役割を果たす無色透明な組織です。白内障はこの透明な水晶体が白く濁ることで視力が低下してしまう病気です。主に加齢が原因で、老廃物の蓄積や水晶体のタンパク質の変性によりにごりが発生すると言われています。

視力が低下するのは、水晶体がにごると眼の中に入った光が乱反射し、網膜に正しく届かなくなるためです。早い人で40歳から発症し、80歳以上ではほとんどの人が白内障の状態にあるとも指摘されています。

白内障の原因

白内障の原因の約9割は加齢によるものです(加齢性白内障)。また、ほかの眼の病気と併発する場合や外傷、ステロイド剤の副作用などが発症の引き金になることもあります。

<発症原因による白内障の分類>

  • 加齢性白内障…約9割を占める最も多い白内障。加齢によって水晶体のにごりが進行する
  • 併発白内障…網膜剥離やぶどう膜炎などほかの眼の病気によって併発される
  • アトピー性白内障…アトピー性皮膚炎に起因し、かゆみで目を掻くなどの刺激も関係している
  • 糖尿病白内障…糖尿病の合併症で白内障が引き起こされる場合もある
  • 外傷性白内障…眼に何かぶつかるなどの衝撃や外傷が原因。傷によって白内障の進行が早いことも
  • 若年性白内障…20~30代で発症する。紫外線やストレス、先天的な白内障をもっていた可能性もある
  • ステロイド白内障…全身疾患の治療で使われる内服薬、喘息で使用する吸入薬によって引き起こされる

白内障は進行する

白内障は症状が進行する病気です。進行期によって4つの段階に分類できます。

進行度 特徴
初期白内障 ●      水晶体の皮質のにごりが始まった状態

●      自覚症状はほぼなし

中期白内障 ●      にごりが水晶体の皮質から核に進行する

●      眼のかすみ、まぶしく感じるなど症状が出始める

●      日常生活に支障は少なく、中期で発見すると治療がスムーズ

成熟白内障 ●      水晶体全体が白くにごってくる

●      かすみやまぶしさのほか視力低下も起こる

●      早めの手術が必要

過熟白内障 ●      水晶体が硬化しはじめ、にごりは茶色に

●      失明のリスクが高くなる

●      手術後に視力が戻らない可能性もある

白内障は進行すればするほど、日常生活への影響が大きくなり、治療も難しくなります。進行してしまったケースでは、治療後も視力が回復しづらくなるなどリスクが高まるため、見え方の異変に気づいたら速やかに眼科を受診しましょう。

白内障の検査

白内障の疑いがあるとき、眼科で診断するために行われる検査について説明します。

視力検査/コントラスト感度検査

裸眼での視力、眼鏡などによる矯正視力の両方を測定します。「眼鏡が合わなくなった」「前より見えにくくなった」と感じたら、近視が進んだと考えられがちですが、年齢によっては白内障が発症または進行している可能性も否定できません。
白内障を発症すると、視力だけでなく物体をはっきりと識別するための「コントラスト感度」が低下します。周囲が暗い夜道で運転しづらくなったり、日差しをまぶしく感じたりする症状が表れるため、コントラスト感度の検査も重要です。

屈折検査

屈折検査では遠視や近視、乱視など屈折の種類や程度を測定します。白内障により眼内の屈折に異常がないかを調べます。

眼圧検査

眼圧とは、眼球の内部からかかる圧力のことです。主に緑内障の検査で用いられますが、白内障の症状が進行した際に眼圧が高くなるケースもあるため、白内障検査でも使用されます。
眼圧は圧縮した空気を送って、一時的に眼の表面をへこませることで測定します。

細隙灯顕微鏡検査

細隙灯(さいげきとう)という眼に細長い光を当てて行う顕微鏡下の検査です。水晶体だけでなく、角膜や虹彩なども観察します。

白内障の治療方法

眼のかすみや視力低下など、症状が軽い初期の白内障では、一般的に経過観察となるケースが多いです。しかし、白内障の根本的な治療を行うには手術が必要となります。

経過観察での注意点

白内障の初期は、近視や遠視、乱視の度数が変わるケースがあります。眼科を受診して、適した眼鏡を作製することで、見えやすくなる可能性もあります。
しかし眼鏡をかえても対象物が見えにくいときや、二重、三重に見える場合は手術による治療を選択されることもあります。

白内障の手術

白内障の一般的な手術は、超音波乳化吸引術です。にごりが進んだ水晶体を砕いたうえで吸い出し、新たに眼内レンズを水晶体の代わりに入れる手術です。

高齢化が進行し患者数が増えたため、厚生労働省の公表データによると国内では年間150~170万件ほどの白内障手術が行われています。眼内レンズや手技の進歩により、日帰り手術が適用される場合も多くあります。眼球にのみ局所麻酔をかけ、早ければ10~20分程度の手術時間で完了します。

大きな病院だけでなく、眼科のクリニックでも行われる手術ですが、白内障の手術を専門とする眼科医が専用の手術機器を用いて行う繊細な手術です。

眼内レンズの役割

白内障の手術に欠かせない眼内レンズが誕生したのは1950年頃です。それまでは、にごった水晶体を取り除く手術しかできませんでした。
術式の進歩と共に、レンズも高機能なものに進化を遂げてきました。とくに多焦点レンズと呼ばれるレンズが開発されたことで、手術後に眼鏡を利用する機会が減る方も増えてきています。

眼内レンズの安全性

眼内レンズは水晶体に代わり、術後も長期間にわたって視覚を支えるものです。身体の一部になるものなので品質や安全性が気になるのは当然のことでしょう。
一般的に国内で使用される眼内レンズは、厚生労働省が承認した医療機器になり、厳正な審査を通過した安全性の高いものです。
角膜の傷を極力小さくするために、眼内レンズは折り畳んで挿入されますが、レンズの挿入後に

  • 元の形に戻るか
  • 強度が十分か
  • 眼内で劣化しないか
  • アレルギー反応や人体への有害性

などがしっかりと確認された上で、手術に用いられています。
材質はやわらかいアクリル製のものが多く、耐用年数は「患者さんの余命よりも長い」と考えられています。

白内障の発症や進行を抑えるには

加齢にともなう白内障の発症は誰にでも起こり得ることですが、日常生活の行動次第で発症や進行のリスクを下げることは可能と言われています。

紫外線を防ぐ

たんぱく質が酸化し変性することで、水晶体はにごると言われています。紫外線はその酸化の要因となるので、とくに夏季の外出時にはサングラスや帽子を使って、できるだけ眼に紫外線が届かないようにしましょう。

禁煙する

喫煙は白内障発生リスクを上昇させ、一方で禁煙は白内障の発症リスクを下げる効果があるとする研究結果が報告されています。
タバコに含まれるニコチンは毛細血管を収縮させ、血流を悪化させるだけでなく、煙の成分がビタミンCを破壊すると言われています。ビタミンCには抗酸化作用があるため、白内障の進行を抑える可能性がありますが、喫煙によってこうした作用も妨げられてしまいます。

糖尿病の対策を行う

糖尿病は白内障の発症原因のひとつとされています。糖尿病自体は、30~40代の早い段階で発症する場合もあり、そのため若くして白内障を併発するケースもあります。
血糖値が高いと、水晶体にも糖分が蓄積しやすくなるため、にごりの原因となり、白内障が発症・進行してしまいます。糖尿病への適切な対策は、白内障の発症・進行を遅らせることにもつながるでしょう。
生活習慣を見直し、バランスのよい食事や適度な運動の習慣化で血糖値をコントロールすることが大切です。

白内障に関するQ&A

Q:白内障になりやすい人は?

加齢・老化による白内障は、高齢になるほど発症しやすいといえます。ただ合併症や紫外線からの発症リスクもあり、年齢の若い方でも糖尿病やアトピー性皮膚炎があると白内障を発症する可能性があります。

Q:白内障の初期症状は?

加齢性の白内障は、水晶体の周囲から徐々ににごり始めます。初期白内障では自覚症状がない場合がほとんどです。水晶体の白濁が進むと、視界が白くかすむ、もやがかかったように見える、物体が二重に見えたり、ぼやけたりするなどの症状が現れます。

Q:白内障を手術しないで治したいです。可能ですか?

白内障が進行して、白くにごった水晶体は手術以外の方法で治すことはできません。症状が進行していた場合は、にごった水晶体を人工の眼内レンズに置き替える手術を受ければ治療できます。

 

【監修】

大阪大学名誉教授(医学部眼科)
不二門 尚先生
小児眼科、弱視斜視、眼光学、ロービジョンなどを専門とする他、一般眼科にも取り組んでいる。

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