社会

エンゲージメントサーベイの結果を踏まえ、従業員の声を起点とした職場改善活動が各事業所で広がっています。対話を重視した取り組みにより、働きがいのある職場づくりが進み、組織全体のエンゲージメント向上につながっています。また視力に着目したコミュニティ活動も継続しています。

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執行役 チーフサステナビリティ(ESG)オフィサー
中川 知子

人的資本

人権尊重

基本的な考え方

HOYA グループのすべての役員と従業員、そして当社事業活動に関わるすべてのステークホルダーの人権を尊重し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」にのっとって人権への取り組みを進めています。

「HOYA行動基準」
「HOYA行動基準」では、HOYAグループの理念と価値観に基づき、業務を遂行するにあたり守るべき基本的な指針を定めています。基本的人権を尊重し、あらゆる企業活動において、人種、国籍、性別、宗教、信条、出生、年齢、心身の障がいなどによる差別やいやがらせ(ハラスメント)を排除すること、そして児童労働、強制労働、人身売買の禁止を行動基準で明確にうたっています。また、従業員が安心して仕事に従事できる、安全かつ健全な職場環境づくりを目指しています。会社の提供する設備や制度・労働条件を整えると同時に、社員一人ひとりが他者を尊重し、協力しあうことで働きやすい環境を作っています。
グローバルに事業を展開する当社の状況に鑑み27言語で整備し、グループ全社員を対象に年に一度eラーニングや確認テストなどを通してグループ内での周知徹底を図っています。また、内部監査を実施して、上記の手順が実施されていることを確認しています。2024年度グループ全従業員対象の本行動基準の順守に関する確認書の提出率は99%でした。

HOYAグループ人権方針
HOYAグループの企業理念、経営基本原則にのっとって、人権尊重の姿勢を明確に示すHOYAグループ人権方針を2022年10月に取締役会承認のうえ制定しました。当人権方針では当社を取り巻くステークホルダーとのパートナーシップも適用範囲に含め、国連「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)「労働における基本的原則および権利に関する宣言」、 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、国連「グローバル・コンパクト」の10原則といった国際的な原則やガイドラインを順守することを定めています。 そして、人権方針に基づいて、1)人権デュー・デリジェンスの実施、2)救済措置、3)ステークホルダーとの対話、4)啓発活動・教育、5)情報開示を通じて人権尊重を実践していきます。人権方針は、日本語と英語で会社WEBサイト上に公開されており、各ステークホルダーに周知しています。

人権対応推進体制
チーフサステナビリティ(ESG)オフィサーの下、グループ本社のESG推進室が中心となりコンプライアンス、法務、人事部門など本社関連部門との連携をとりながら、人権に関するグループ全体の方針や計画立案、進捗状況の確認をタイムリーにおこなっています。また、チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)を中心とした組織体制でグローバルでのコンプライアンスリスク管理を実行しており、労務関連のコンプライアンスや消費者(患者様)の安全・知る権利、プライバシー保護・個人情報管理、賄賂・腐敗といった人権関連課題を含むコンプライアンス全般に対応しています。活動や進捗状況は定期的に取締役会に報告され、取締役会からのフィードバックを活動に反映しています。

人権デュー・デリジェンス

人権課題(負の影響)の特定
当社グループのバリューチェーンにおける人権リスクを把握するため、2022年度に事業内容等に鑑み4事業部(メガネレンズ、医療用内視鏡、半導体用マスクブランクス、HDD用ガラスサブストレート)を選定し、外部専門家による専門的知見を得ながら、人権に関する国際規範やガイドライン※1・業界特性・国リスクなどの外部データ・事業部門や本社関連部門へのヒアリング結果を参考にしてステークホルダーごとに人権に及ぼす潜在的な課題・リスクの洗い出し・整理をおこないました。当社バリューチェーンにおける人権リスクアセスメントの結果、特定された各ステークホルダーに関連する潜在的な人権課題は以下の表の通りです。

※1 国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、ILO「労働における基本的原則および権利に関する宣言」、国連「グローバル‧コンパクト10原則」、OECD「多国籍企業行動指針」など

特定した各ステークホルダーに関連する潜在的な人権課題

項目

ステークホルダー

自社従業員
(製造部門)

自社従業員
(製造部門以外)

サプライヤー

消費者・患者

地域住民

労務コンプライアンス

差別の禁止

ハラスメント

ジェンダー

労働安全衛生

過剰・不当な労働時間

賃金の不足・未払

児童労働

強制労働

移民・外国人労働者の権利

法的救済へのアクセス

消費者の安全・知る権利

プライバシー保護と個人情報管理

環境・気候変動に関する人権

賄賂・腐敗

HOYAグループ デュー・デリジェンス方針
従前より実行している行動基準への理解を深める施策やハラスメント防止対策での教育研修などに加えて、人権への負の影響の特定・評価に関する基本的な考え方や仕組み、負の影響を防止、軽減、停止または最小化するためのメカニズム等を定めるため、2024年10月にデュー・デリジェンス方針を策定しました。HOYAグループ デュー・デリジェンス方針は、取締役会の承認を経て公表されています。

負の影響の特定・評価
一部の事業部門では、グループ全体の取り組みに先んじて取引関係におけるステークホルダーへの負の影響を特定し評価する取り組みをおこなっています。例えば、MD事業部では、各サプライヤーがThe Responsible Business Alliance(RBA)の行動基準※2を順守しているか、取引開始時および取引開始後、定期的に確認する方法で人権リスクを含めたサプライヤー評価をおこなっています。また、PENTAX事業部では、サプライヤーの人権リスクを特定・評価する目的で、グローバルに展開する前に、欧州に所在する一部の法人において試験的にアンケート調査を実施しました。人権に関する方針・宣言書の有無やネガティブニュースの有無を基準としてサプライヤーの人権リスクを評価しました。それらのフォローアップとしてサプライヤーとのエンゲージメントを実施し、人権への悪影響を低減するよう努めていく予定です。
今後は、各事業部門の取り組みをグループ全体で統合・展開することを視野に入れ、より幅広いステークホルダーを対象として、人権課題の特定やエンゲージメントによる協働の促進に一層注力していきます。

※2 サプライチェーンにおいて労働環境が安全であること、また責任を持って倫理的にかつ人権と環境を尊重してビジネスがおこなわれていることを確実なものにするための基準

是正・苦情処理メカニズム

HOYAグループでは、コンプライアンスシステムの一環として、グループ内外からの通報・相談を受け付ける「HOYAヘルプライン」を2003年から設置しています。これは、取引先の社員などを含めたグループ内外からの通報を受け付け、法令や「HOYA行動基準」に違反する行為があった場合、通報者の保護を図りつつ、早期に問題を把握し、経営トップへスムーズに伝達する仕組みで、迅速かつ適切に対処することでグループ全体の健全性を確保することを目的としています。また、通報に関する情報はCCOから監査委員会にも四半期ごとに報告しています。
24時間多言語でのWeb受け付け、現地語で相談できる体制、匿名通報可能など、相談しやすい環境作りをおこなっています。法令に準拠したHOYAヘルプライン運用規定を作成し、通報者への不利益行為を厳しく禁止して通報者を保護し、匿名性を担保するために情報の機密性に配慮して対応しています。
2024年度、HOYAヘルプラインに寄せられた内部通報は297件で、そのうち職場環境に関連するものは62%、会社のルールについての質問等は17%を占めました。

また2023年度よりハラスメントについては人事が受け付けた案件もコンプライアンス部門と共有することで施策やトレーニングの強化に努めています。
2024年度の内部通報のうち、当社事業に重大な影響を与える事案はありませんでした。

詳細は「コンプライアンス」をご覧ください。

社員への教育・研修

「HOYA行動基準」に関して、グループ全社員を対象に年に一度eラーニング・確認テストなどを実施し、グループ内での周知徹底を図っています。また、ハラスメントに関しても、未然に防止し、従業員の個人としての尊厳を守り、職場秩序の乱れや業務への支障を予防するための対策や指針を示したHOYAグループハラスメント防止対策ポリシー・ガイドラインを制定し、当ガイドラインや各国の法規制に基づく形で、グループ全社員を対象にハラスメント防止対策教育研修を実施し、国内においては階層別の研修もおこなっています。(2024年度国内ハラスメント防止対策研修・テスト受講率88%、未受講者には継続してフォローアップを実施)

サプライチェーンの取り組み

当社グループでは、商品やサービスを提供していただいているサプライヤーの皆様に、当社と同水準の法令順守および倫理的慣行を共有することを目的として「HOYAサプライヤー行動基準」を策定し、これに基づき受理・署名および順守をお願いしてきましたが、昨今のサプライチェーンにおける人権問題や環境問題への関心の高まりとHOYAグループとして責任ある調達を実施する責務を反映し、2024年度に「HOYAサプライヤー行動基準」を改定しました。本行動基準には、強制労働・児童労働・差別やハラスメント・贈収賄の禁止、結社の自由・団体交渉権の尊重や労働安全衛生の確保が定められており、加えて、環境保護の責務も規定されています。HOYAグループは、引き続き、サプライヤーに行動基準の順守を求めていきます。また、責任ある鉱物調達の取り組みとして紛争鉱物調査を実施し、サプライヤーからの調査回答回収率やRMAP適合製錬業者数・比率の目標を設定の上、結果をモニタリングし、紛争鉱物に対するリスク低減に向けた取り組みを推進しています。
詳細は「サプライチェーン・マネジメント」をご覧ください。

消費者(患者様含む)の安全への取り組み

製品安全管理体制の強化を目的に、ヘルスケア製品に要求される国内外の基準、製品品質・製品安全に関する諸法令や各種規範の順守を徹底するため、2022年度より社外取締役で構成されたヘルスケア・コンプライアンス委員会を運営しています。社外取締役から客観的な視点に立った助言を得て、また、必要に応じてヘルスケア製品(当社ライフケア製品群)にかかわる各国の法令に精通している専門家からもアドバイスを受けながら、規制対応担当者を中心として製品安全確保のための活動に取り組んでいます。
詳細は「製品安全品質管理指針・体制」をご覧ください。

プライバシー保護と個人情報管理への対応

「HOYA行動基準」において、個人のプライバシーを保護する権利の尊重や個人情報管理について定めており、HOYAグループ全社員を対象に情報流出漏えいを防ぐためのセキュリティ意識向上を目的としたサイバーセキュリティトレーニングをeラーニングで定期的に実施しています。また、2022年に個人番号および特定個人情報の取り扱いに関する基本方針を定め、関連法やガイドラインを順守する姿勢を明確にし、個人情報の取り扱いに関する問題の発生防止に取り組んでいます。

賄賂・腐敗への対応

「HOYA行動基準」に基づき、贈収賄・腐敗行為防止の取り組みを強化するために、2021年に贈収賄および腐敗行為 禁止ポリシーを制定しました。本ポリシーでは、贈収賄・腐敗行為防止のためのルールや社内管理体制、研修を含めた施策等を具体的に定めています。また、取締役会が贈収賄および腐敗行為に関する問題を適宜モニタリングしており、従業員への教育も継続しておこなっています。
2024年度は社外に公表すべき重大な腐敗・贈収賄防止法違反が1件発生し、政治献金は0件でした。当社はこの事案を重く受け止め、再発防止に向けた内部統制の強化と、倫理順守に関する社員教育の徹底を図ります。

英国現代奴隷法への対応

HOYAグループは、2015年に英国で施行された現代奴隷法に基づき、奴隷労働や人身売買等を防止すべく取り組んでいる内容についての声明を公表しています。
(声明についてはこちらをご覧ください。(英文のみ。))