社会
人的資本
人材戦略
人的資本戦略
HOYAグループは、人材を最重要資本の一つと位置付け、継続的な投資を通じて競争優位性の確保を目指した人材戦略を策定しています。
当社は、グローバルにおける最適地生産・販売を推進する中で、人材の多様性を強みと捉え、持続的な価値創造の源泉と考えています。HOYAグループの理念と価値観に基づき、従業員が業務遂行時に順守すべき「HOYA行動基準」を27言語で展開し、グループ全体で一体感の醸成を図っています。
また、個人の尊重を経営の基本原則とし、自主性と創造性を最大限に発揮できる機会の提供、安全で働きやすい環境の整備に努め、従業員のゆとりと豊かさの実現を目指しています。
HOYAグループでは、従業員のウェルビーイングを重視し、多様な人材が活躍できる環境づくりをサステナビリティ方針の一環として推進しています。優秀な人材の確保競争が激化する中、多様性のある人材の育成はイノベーション創出の機会と捉え、「従業員エンゲージメント」「ダイバーシティ&インクルージョン」をマテリアリティの一つとして特定しています。

多様性(ダイバーシティ)
グローバルな人材活用
HOYAグループは、グローバルにおける最適地生産・最適地販売を推進する中で、人材の多様性を競争力の源泉と捉えています。国籍や性別にとらわれず、個人の能力に基づく採用を進めており、社員の90%以上が日本以外の拠点に所属しています。
現地の優秀な人材を積極的に登用し、活躍の機会を広げることで、グループ全体のグローバル化を加速し、現在では、海外現地法人の約9割で日本人以外が責任者を務めており、2025年6月末時点では、主要事業部門の約半数で日本人以外の事業部長がグローバルに事業を運営しています。
HOYAグループは今後も、国籍を問わず優秀な人材に活躍の場を提供し、多様性を活かした価値創造を推進していきます。
ダイバーシティと公平な人材活用の推進
社員一人ひとりが仕事にやりがいを感じ、その能力を最大限に発揮できる職場環境の実現を目指し、2014年にダイバーシティ推進プロジェクト「みん活(みんなが活躍できる職場づくり)」を発足しました。
この取り組みでは、女性比率が比較的他国より低い日本を中心に、女性社員および女性リーダー(係長相当以上の組織の長や高度専門職)の比率向上を目指しています。2025年度末までに、国内女性リーダー比率18%、国内女性社員比率32%の達成を目標に掲げ、性別による役割分担意識の払拭、女性管理職候補の計画的育成と機会提供、外部人材の積極的な採用など、多角的な施策を推進しています。
また、HOYAグループでは、同一労働・同一賃金の原則に基づき、採用・昇格・昇給において性別による差別をおこなわず、高い専門性と倫理観を備えた人材を積極的に登用しています。HOYA株式会社では、取締役7名のうち2名が女性の社外取締役(女性比率28.6%)、執行役を含む役員全体では3名(37.5%)が女性であり、経営層における多様性の確保にも取り組んでいます。
女性社員比率・女性リーダー比率
女性社員比率 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
---|---|---|---|
日本国内 |
29.9% |
29.7% |
30.4% |
海外 |
54.6% |
51.1% |
56.5% |
全社 |
52.0% |
48.9% |
54.2% |
女性リーダー比率 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
---|---|---|---|
日本国内 |
14.2% |
15.5% |
15.6% |
海外 |
41.6% |
41.0% |
38.5% |
全社 |
35.9% |
35.7% |
33.6% |
※日本国内はみん活調査、海外はグローバル人事システムデータを基に算出しています。
国内女性社員比率・女性リーダー比率

活躍を支える環境整備
HOYAグループでは、社員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境の整備と、事業特性に応じた制度設計・風土づくりに各事業部で取り組んでいます。多様な人材が活躍できる職場づくりは、企業の持続的成長に不可欠であり、仕事へのやりがいと個人の生活の充実を両立させることを目指しています。
そのために、柔軟な働き方を可能にする制度の導入や、心理的安全性の高い職場風土の醸成、生産性向上に資する業務プロセスの見直しなどを推進しています。これらの取り組みを通じて、社員のエンゲージメント向上と企業価値の最大化を図っています。
働き方全般に関するもの
・フレックスタイム制
・短時間、短日数勤務
・副業
・在宅勤務
・年休奨励日の設定による年休の積極的取得推進
・チャレンジ休暇※ 等
育児介護支援に関するもの
・育児介護支援制度(休業、短時間勤務)
・早期復帰支援制度
・時差出勤
・子供の看護休暇
・男性育休取得の推進
・介護休暇 等
※チャレンジ休暇: HOYA株式会社では、一定の勤続年数に達した社員にチャレンジ休暇を設けています。週5日勤務の社員の場合は勤続年数が満10年、満 20年、満30年に達した時点でそれぞれ20日のチャレンジ休暇が付与されます。
障がいのある方の活躍を支える職場づくり
HOYAグループでは、障がいの有無にかかわらず、すべての人が能力を発揮し、やりがいを持って働ける職場環境の整備に取り組んでいます。その一環として、アイケア事業における環境活動「アイシティ ecoプロジェクト」を支える拠点として、市川チャレンジオフィスを運営しています。
このオフィスでは、障がいを持つ方々が業務を通じて社会とつながり、自己実現を図ることができるよう、業務内容や職場環境を工夫し、継続的な支援体制を整えています。こうした取り組みを通じて、障がいを持つ方々が活躍できる職場を提供し、誰もが活躍できる職場づくりを進めています。
関連記事 アイシティのSDGs
従業員エンゲージメント
働きがいと成長を支える人材マネジメント
HOYAグループは、「会社は人なり」の考えの下、多様な社員がそれぞれの能力を最大限に発揮し、新たな挑戦に取り組める職場環境づくりを重視しています。社員一人ひとりが自身の可能性を広げ、会社とともに成長できる環境の整備は、持続的な企業価値向上に不可欠です。
その一環として、グローバル全社員を対象に従業員エンゲージメントサーベイを定期的に実施しています。2020年以降、これまでに4回実施しており、サーベイ結果は全社的な分析に加え、各職場レベルでもディスカッションを通じて改善点を特定し、具体的な行動計画へとつなげています。
2024年度に実施したサーベイでは、グローバルで94%の従業員が参加し、外部のグローバルベンチマークを上回る高いエンゲージメントレベルを達成しました。
これまでの調査結果を踏まえ、グローバル共通の課題に対応する施策として、特に「タレントマネジメント」と「キャリア開発」の2分野に焦点を当て、以下をグループ全体に展開しています。
パフォーマンス・マネジメント(業績評価制度)
従業員の能力を最大限に引き出すためには、公正で透明性の高い評価制度の整備が不可欠であると考えています。2022年度より、グローバル全拠点で共通の評価フレームワークを導入し、国や部門を問わず同じ評価軸で業績と行動を測定できる仕組みを構築しました。
この制度では、業績目標や行動に対する明確な期待値を設定し、360度評価などを活用して多面的かつ客観的に評価をおこなっています。評価結果は報酬に反映されるだけでなく、定期的かつ効果的なフィードバックを通じて、社員の成長支援と人材育成にもつなげています。これにより、社員のモチベーション向上と納得感のある評価を実現しています。
キャリア開発
社員一人ひとりが自律的にキャリアを築き、企業の成長とともに自身の成長を実感できる環境づくりを重視しています。急速な技術革新や事業環境の変化に対応するため、継続的な学びとスキルのアップデートは不可欠であり、企業競争力の維持にも直結します。
そのため、グローバル全社員を対象にオンデマンド型の学習プラットフォーム(LinkedIn learning)を導入し、社員が時間や場所を問わず、自身の業務やキャリア目標に応じた学習コンテンツにアクセスできる環境を整えています。この仕組みにより、HOYAの成長戦略を支える人材の再教育やスキル強化を図るとともに、生涯学習の文化を醸成し、社員の成長意欲を高めています。
多様な職場ニーズに応えるエンゲージメント施策
従業員エンゲージメントサーベイの結果を踏まえ、HOYAグループでは、グローバル共通の課題に対応する施策をグループ全体で展開するとともに、各事業部・事業所の特性やニーズに応じた多様な施策も推進しています。これにより、社員の声を反映した職場環境の改善を全社的かつ現場レベルで実現し、働きがいの向上と組織の活性化につなげています。
その一例として、HOYAグループの日本国内従業員を対象に、従業員一人ひとりのキャリア自律と成長を支援することを目的として2024年度に「キャリアデザインラボ」を設置しました。ライフステージに合わせた自己理解やキャリアビジョンの明確化を促すワークショップや、希望者にはキャリアコンサルタントとの1on1面談を実施するなど、個人に合わせたサポートをしています。今後は、業務変化や将来のキャリアに備えたリスキリング支援として、eラーニングや社内研修を拡充する予定です。
さらに、グローバルに事業を展開し、HOYAグループ内で最大の従業員数を有するビジョンケア事業部(メガネレンズ)では、独自のサステナビリティプログラム「One Vision」を推進しています。このプログラムは、「Environment(環境への配慮)」「Workplace(安全で多様性のある職場づくり)」「Community(地域社会への貢献)」の3つの柱を軸に展開しています。このような取り組みを通じて、世界各地で働くHOYAグループの従業員が共通の価値観を持ち、国や文化を越えて連帯感を育みながら、持続可能な未来に向けた共通の意識と行動を醸成しています。
「One Vision」の活動は、世界各地に配置された100名以上のアンバサダーが地域ごとの活動を主導し従業員の参加を促しながら、グローバルに活動を推進しています。
その中核をなす「One Vision Day」では、各国・各拠点が独自に日程を設定し、地域や職場に根ざした活動を実施しています。これまでに、数千人以上を対象とした無料視力検査、地域での植樹や清掃活動、メガネレンズの寄付や募金活動、従業員のウェルビーイング向上キャンペーンなどを実施しています。これらの活動は、従業員が自らの価値観や社会貢献意識を職場で実現できる機会となり、組織への帰属意識や誇りを高め、エンゲージメントの向上につながっています。

人材の育成
基本的な考え方
HOYAグループは、社員の安全と健康に配慮しながら、個性と多様性を尊重し、個人の成長を促す職場環境の提供に努めています。社員一人ひとりが知識と技術の向上に取り組み、社会に革新的な価値を提供することを目指しています。
人材育成
社員の価値観や働き方は多様であり、それぞれの適性に応じた環境で能力を伸ばすことが重要です。社員が持てる力を最大限に発揮し、組織や事業に貢献できるよう支援しています。多様な能力開発ニーズに対応するため、事業部や地域、さらには部門ごとに最適な教育研修プログラムを展開しています。新入社員向けのOJTやメンター制度、職位別のリーダーシップ研修などキャリア形成支援に加え、安全関連研修(CPR・消防訓練など)や製品の安全性・品質管理に関する専門研修も実施しています。さらに、社員が自律的に学べる環境として、LinkedInのオンデマンド学習プラットフォームを活用し、業務や役割に応じた知識・スキルの習得を支援しています。
事業部別の研修事例
アイケアカンパニーの人材育成
「コンタクトのアイシティ」を運営するアイケアカンパニーでは、店舗スタッフ“アイ-コンシェルジュ”の接客力とホスピタリティ向上を目的に、独自の育成プログラムを展開しています。研修は以下の3本柱で構成され、eラーニングと現場指導を組み合わせて自律的な学習を促進しています。
オペレーション教育:接客・接遇スキルの向上
テクニカル教育:コンタクトレンズに関する専門知識の習得(4段階のレベル設定)
マネジメント教育:チーム統率に必要な知識・スキルの習得
HOYA Electronics SingaporeのEICC行動規範セミナー
HOYA Electronics Singaporeでは、毎年EICC(電子業界CSRアライアンス)行動規範に関するセミナーに参加し、労働環境の安全性、労働者の尊厳、環境責任などに対する理解を深めています。これは、持続可能な製造活動と倫理的な企業運営を推進するための重要な取り組みです。
表彰制度
HOYAグループでは、グループ全体での表彰制度を設け、個人・組織の成長を促進しています。クロスカントリー・クロスカルチャーで1つの⽬標に向かう協同作業は、チームワークの促進や多様性への理解を深め、事例の広い共有が組織の加速度的な成長を促します。また、事業部独⾃の賞を設けるなど、社員が⾃律的に課題解決に取り組む挑戦を後押ししています。
HOYA PRIZE
厳しいビジネス環境の中で日々努力を重ねる社員に感謝の意を表し、その貢献をたたえる全社表彰制度です。各事業部門や人事責任者の推薦を基に、CEOが選定・表彰をおこないます。細かな選考基準は設けず、柔軟な評価を通じて多様な活躍を認めています。
ESGアワード
事業の垣根を越えて知見をHOYAグループ内で共有し、ESG活動をさらに前進させることを目的に創設された社内表彰制度です。環境負荷の低減、ダイバーシティの推進、ESG意識の醸成、自社製品・サービスを通じた社会課題の解決など、持続的成長に資する取り組みを表彰します。この制度を通じて、社員のモチベーションとエンゲージメントを高め、企業価値の向上につなげています。

