社外取締役インタビュー

HOYAならではの新たな価値を
市場に提供するために、
取締役会として成長戦略の構築を
支援・監督していきます。

筆頭独立社外取締役
監査委員会委員長
指名委員 報酬委員 ヘルスケア・コンプライアンス委員
吉原 寛章

池田さんのCEOとしての初年度をどのように評価しますか?

2022年3月、20年以上にわたり高業績を残した鈴木前CEOが退任、その後任として池田さんが就任しました。新CEOとして池田さんがどのようなリーダーシップを発揮するか、期待と注目が集まった1年だったと思います。ここ1年と数カ月、池田さんは新CEOとして試行錯誤も多くあったかもしれませんが、HOYAの経営理念および哲学を胸に、実直に責任を果たしてきたと感じています。また、厳しい経営環境下で不確実性の高いなか、収益性を追求し、またリスクへの迅速な対応を実行したことで、2022年度はとても良い業績を達成できました。これもひとえに、池田CEOをはじめ新経営陣の経営手腕の表れだと言えます。まだ、いろいろと課題はありますが、順当な初年度でした。ただ、HOYAの技術力・生産力・人財といった経営資源と市場におけるポジショニングを考慮すれば、今後、一層の飛躍が期待できることを付け加えておきます。

新経営陣下で最も大きく変わったことは何だと感じていますか?

これまで同様、HOYAの強みである厳格な事業ポートフォリオマネジメントおよび収益性への徹底したこだわりという経営哲学の下、オペレーショナル・エクセレンスの追求により高業績が継続されています。

池田CEO就任後に大きく変わったこととしては、2つの新たな体制強化策があります。1つ目は、2022年3月に中川さんがChief Sustainability(ESG)Officerに任命され、彼女のリーダーシップの下、ESG専任組織が本社ならびに各事業部で新設され、ESG戦略の推進が強化・加速されていることです。社外取締役の私から見ますと、強化されているとはいえ、ベストプラクティスと比べれば、特にE(環境)とS(社会)の分野でやらなければならないことが多々あると感じます。とは言え、体制ができ、経営陣のスポンサーシップとコミットメントが明確になったことが、大きな進歩です。2つ目として、2022年10月に導入した社内カンパニー制度が挙げられます。現時点では、3つのカンパニーという形はできましたが、その実態をどのように充実させていくかを模索中で、取締役会でも議論を継続している状況です。近い将来、カンパニー内での人財・アセットなどの一層の共有および有効活用による新製品・サービス開発、グローバルフットプリントの改善、組織・人財の活性化およびシェアードサービスなどによるコストベネフィットなど、数字に明確に現れる形での恩恵を享受できることを大変、期待しているところです。

独立社外取締役の立場から見て、HOYAが注力すべき経営課題は何でしょうか?

現在、HOYAが安定して高い業績を達成し、マーケットで高い評価を受けていることはとても素晴らしいことです。ただ、過去の多くの企業の栄枯盛衰の例を見ても明白ですが、短期的な収益性にこだわりすぎると、中長期の大きな目標に向けたビジョンや企業文化が減退していく事例が散見されます。HOYAとしては、特定の分野で非常に優位なポジションを占めている今だからこそ、将来の明確な成長ドライバーとなる事業を創出することが、喫緊の課題となっています。例えば、HOYAのコアコンピタンスとの親和性が高く、技術・人財・顧客など多くの観点から考えて、大きな相乗効果が期待できる分野での企業買収の検討と実行も重要になると思います。取締役会では、種々のシナリオを検証しながら、その短期の収益性と中長期の成長性のバランスを達成していくための実行策の内容について、経営陣と議論を重ねているところです。

ほかにも、CEOを含めたリーダーシップのサクセッション・プランニングのプロセスを組織全体として構築していく必要があります。そのために、CHRO(Chief Human Resource Officer)が中心となり、グローバル人事制度の刷新が進められています。人財のパイプラインの見える化を進めることにより、リーダーシップ人財の育成状況、将来必要なタレントなどを明確化し、人財マネジメントを計画的また迅速に実行することがグローバルマーケットで戦っているHOYAにとって特に重要です。

改めて、HOYAのコアコンピタンスとは何だとお考えですか?

まず、光学と精密加工の分野を80年以上にわたってリードし、強固なポジションを築いてきたことです。2つ目としては経営陣が、市場における各事業の持つ競争優位性を常に評価していること、また組織全体の根底に流れる収益性への妥協なきこだわりが挙げられます。3つ目として、ほかの多くの企業と比べて危機・リスクに対する反応と対策実行力が迅速で、とても優れていることです。

また、これはコアコンピタンスと言うべきなのか、私が2018年6月に取締役に就任してすぐに驚いたことのひとつですが、本社管理部門がとても少数精鋭の人財で役割分担され機能している点です。今でも、本社機能に携わっている人数がこれだけ少ない会社は大変珍しいと思いますし、時折、もう少し本社の陣容を増やしてもよいのではないかと感じることもあります。もちろんその根底には、人財はできるだけ現場に近いところで仕事を担うべきという方針と、グループ本社/カンパニー/事業部での役割分担、社内でやることと社外にアウトソースすることが明確に定義されている証拠であると理解しています。

取締役会にとっての今後の注力点を教えてください。

すでに述べてきましたが、現在、取締役会で監督・支援している重要な注力点として継続的な事業ポートフォリオの評価、中長期での成長戦略の明確化、ESG戦略推進、サクセッション・プランニングの組織的な策定などが挙げられます。

特に、事業ポートフォリオ戦略の評価と成長戦略は密接につながっており、ポートフォリオの見直しにあたっては、HOYAグループとしてどのようなシナジーを全体で生み出せるか、を常に意識しながら議論しています。HOYAならではの新たな価値を市場に提供するために、グループ全体/カンパニー単位/事業部単位のそれぞれで、より整合性のある成長戦略を構築する必要があります。また、「より良い未来のためのイノベーションを」のビジョンの下、成長戦略の源泉としての研究開発のあるべき姿の議論も肝要となっています。夢のある成長戦略・将来のあるべき姿を策定するプロセスにおいて、事業部の責任者やCOO、CTO(Chief Technology Officer)などを歴任しCEOになられた池田さんの知見、経験および手腕に期待するところが大きい領域です。

また、多岐にわたるステークホルダーからの負託に応じ、CEOを選任・解任することが取締役会の重要な役割のひとつですが、経営陣の監督のみならず、現経営陣 がその資質・経験に基づく潜在能力をフルに発揮し、より良いリーダーになれるように取締役会が支援し、共に切磋琢磨していくことも重要です。

最後にステークホルダーの皆様に対してメッセージをお願いします。

素晴らしい経営資源と市場でのポジションを持つHOYAの潜在成長性はとても高いと言えます。不確実性の高い経営環境ではありますが、中長期的な企業価値の向上とともに、「人々のQOL向上」、「人・社会・自然が調和する社会づくりへの貢献のためのESG戦略の推進」の両立を目指し、社外取締役として独立した立場から経営陣の職務執行の監督・支援を真摯に実行していきます。ステークホルダーの皆様の引き続きのご支援をお願い申し上げます。