CFOに聞く
財務ハイライト
FY25は好調な業績を達成。
将来への大型投資と
規律ある資本政策を両輪に、
企業価値の持続的な向上を目指します。

取締役兼代表執行役CFO
廣岡 亮
FY25を業績の面から振り返っていただけますか?
情報・通信事業が年間を通じて極めて好調に推移し、同事業の売上収益は14%増加しました。また、ライフケア事業についても堅調に成長し、7%の増収を達成しています。これら主力事業の伸長がけん引役となり、会社全体の売上収益および利益の着実な成長に結びつきました。
EUVブランクスはさらなる需要に対応するための設備投資の決定、HDD用ガラス基板は顧客獲得に向けたビジビリティの向上など、今後の成長に向けた土台作りができた1年でもありました。また、光学ソリューション(旧映像)事業も力強い成長を遂げました。これは、データセンター向け光トランシーバーで使用される偏光ガラス(CUPO)や、ウェアラブルデバイス向けのレンズなど、新しい製品群の需要が急増したことによるものです。
ライフケア事業については、為替ニュートラルベースでも1桁半ばの安定的な成長ができた1年でした。メガネレンズ事業は、D.I.M.S.(Defocus Incorporated Multiple Segments) テクノロジーを用いて小児の近視のために設計されたメガネレンズMiYOSMARTの販売が堅調に推移し、主要市場の1つである中国では次世代品(MiYOSMART iQ)の販売も開始しました。収益性の面でまだ課題は残りますが、通常の営業活動からの利益率20%を目指して売上の成長とコストの削減に取り組んでいきます。
売上収益(億円)
通常の営業活動からの利益・利益率(億円、%)
FY25は非経常的な特殊要因などはあったのでしょうか?
売上収益は前年比9%の増加となりましたが、税引前利益の増加率は26%と大きくなっています。これは主に、Q3において複数の要因が重なり、300億円超の一時的な収益を計上したことによるものです。
第一の要因は、過去に中国で設立した白内障用眼内レンズの合弁会社に関するものです。将来の持分取得に備えて取得見積額を長期金融負債として計上していましたが、実際の取得額との差異が生じたため、その差額である235億円を一過性の収益として計上しました。第二の要因は、事業ポートフォリオマネジメントの一環として実施した事業譲渡によるものです。内視鏡事業に含まれていた一部製品および、その他事業に含まれていた音声合成ソフトウェアサービスの譲渡により、合計で70億円強の譲渡収益を計上しています。これらの一時的な要因により、当期の税引前利益は売上収益の伸びを大幅に上回る増加となりました。
業績予想は出されていませんが、FY26の方向性はどのように考えていますか?
ライフケア事業、情報・通信事業ともに上向きの業績を維持し、会社全体でも増収・増益を図ります。
ライフケア事業では、内視鏡や眼内レンズにおいて中国市場の不透明さは残りますが、中国におけるMiYOSMART iQの拡販や、日本でのミヨスマート(日本市場での表記)の販売開始、コンタクトレンズの小売店舗の継続的な出店などにより、ライフケア全体では安定的な売上成長を見込んでいます。また、前期から構造改革に着手している内視鏡事業は、費用の合理化を継続することで、同事業がベンチマークとする通常の営業活動からの利益率に徐々に戻していく予定です。
情報・通信事業ではAI推論に欠かせない半導体チップ製造の原版となるマスクブランクス、活発なデータセンター投資と顧客基盤拡大が見込まれるHDD用ガラス基板、データ通信の高速化/高容量化を支えるCUPOなど、FY25からの成長モメンタムを維持する計画です。
EUVとHDDに大規模な投資を決定されました。
その背景と、今後の設備投資/減価償却費の見通しについて教えてください。
EUVはシンガポールに、HDDはベトナムに、それぞれ新工場の建設を決定しました。EUVは既存顧客の需要増に対応するため、HDDは顧客拡大に備えるためと、それぞれ意思決定の背景は異なりますが、新工場稼働予定はFY28中と同じくらいの時期を見込んでいます。
Phase1の投資額はEUVで約420億円、HDDで約500億円を計画しており、FY27以降に本格的なキャッシュアウトが始まります。また、ブランクス事業・HDD事業ともに装置類の減価償却は3年の定額法を採用しているため、工場が稼働するFY28以降は投資額相応の減価償却負担増が見込まれます。一時的に収益低下圧力がかかりますが、成長によってこれを吸収し、情報・通信事業全体の通常の営業活動からの利益率を50%程度で維持します。
中東情勢を発端とした原材料や輸送費の価格高騰等のリスクと対策は?
当社は、足元の中東情勢による影響を大きく3つの観点から捉えています。第一に売上への影響です。FY25Q4において、眼内レンズの中東向け売上が減少しましたが、当社全体の売上に占める割合は限定的であり、影響は軽微にとどまっています。
第二に、エネルギー価格の高騰です。エネルギーコストの上昇は、物流費や出張費などにも波及しており、今後も一定の上昇が見込まれます。当社としては、コスト管理の徹底により、全社的な影響を最小限に抑えていきます。
第三に、原材料に関する影響です。一部原材料において供給懸念や価格上昇が見られますが、影響は限定的です。全社的な管理体制の下、安定調達に努めるとともに、セカンドサプライヤーの選定・確保を進めていきます。
これらを踏まえ、当社固有の影響は限定的であると認識しております。一方で、原材料およびエネルギー価格の上昇といった外部要因については避けがたいものの、価格転嫁やコスト効率性の向上を通じて適切にコントロールしていきます。
資本政策のアップデートがありましたが、その意図を改めて説明していただけますか?
現預金を適正水準まで減らすことを骨子とした、資本政策のアップデートをおこないました。これまで一貫してお話ししてきた通り、成長投資を優先するために、ある程度、厚めの現預金を持つ一方で、それをむやみに積み上げるつもりはなく、株主の皆様にもしっかり還元していく。この基本的な考え方は、今回も変わっていません。
その原則の下、昨年度は配当と自己株式取得を合わせた株主還元を2,600億円超実施しました。一方で、為替の円安が進行したこともあり、外貨建て預金を多く保有している当社では、円ベースでの現預金残高が結果として増加し、前期末時点で約5,700億円となっており、この点については、マネジメントとしてもしっかり課題認識を持っています。
以上を踏まえて、当社が考える適正なネットキャッシュ水準を考えた際、運転資金として月商の2カ月程度に加え、成長投資やM&Aなど、機動的に意思決定をおこなうための共用プールとして、やや厚めの資金を確保しておきたいと考え、合計約4,600億円を現段階での適正な現預金水準と定めました。差額である約1,100億円の余剰なキャッシュは、今後おおむね3年の期間で、主に自己株式の取得を通じて減らしていく方針です。