
ライフケア事業
ヘルスケア関連製品
メガネレンズ
市場環境
近視人口の推移予測

出典:Holden BA, Fricke TR, Wilson DA, Jong M, Naidoo KS, Sankaridurg P, Wong TY, Naduvilath TJ, Resnikoff S, Global Prevalence of Myopia and High Myopia and Temporal Trends from 2000 through 2050, Ophthalmology, May 2016 Volume 123, Issue 5, Pages 1036–1042
近視の急速な進行は世界的な健康課題となっています。近視人口は2050年までに約50億人まで増える可能性があり、特に10歳未満の子どもたちの年間の近視進行が最も速いことが懸念されています。小児近視は、デジタルデバイスの使用によるスクリーンタイムの増加や屋外で過ごす時間の減少などの要因により、世界的な問題となっていますが、近視患者や近視の子供を持つ親の間では、この症状や長期的な影響に対する理解が不十分です*。当社では眼の健康の格差是正に積極的に取り組んでおり、政府機関や公衆衛生機関、医療業界全体と連携し、世界的な眼科医療政策の改善を、促進しています。これにより、子供たちのより充実した生活の実現を目指しています。
また、健康やウェルビーイングに対する意識が世界的に高まっています。こうしたなか、新興国の経済成長による購買力の向上や目の健康に対する意識の高まりもあり、メガネレンズ市場は今後も安定した成長が見込まれています。
なお、世界的に不透明な経済環境が続いていますが、メガネレンズは生活必需品であることや欧米諸国では民間・公的保険による償還対象品であることなどから、比較的景気の影響を受けにくいと考えられています。
*World Economic Forum. Global rates of short-sightedness are rising rapidly, study shows. Accessed April 2024. Myopia: What causes short-sightedness and why is it rising? | World Economic Forum (weforum.org)
当社の状況
事業内容
当社では、顧客の生涯にわたる視力健康をサポートすることを使命としており、一般的な単焦点レンズから、シニア層向けの累進レンズ、小児向けの近視進行抑制用レンズまで、ライフステージに合わせた多彩なラインナップを取りそろえています。顧客に最高品質の製品をお届けすべく、光学設計/レンズコーティング/調光レンズ※の継続的な改良を図るための研究開発に注力していきます。
なお、地域別では欧州、次いで米州の売上高が大きく、海外売上高比率は約9割にのぼります。世界各地に生産拠点があり、タイ、ベトナム、ハンガリーをはじめとする主要な生産拠点では、サステナビリティへの取り組みを強化し、顧客とエンドユーザーに最高の製品とサービスを提供することを目指しています。
* 紫外線に反応し、色の濃度が変化するレンズ
市場ポジション
当社は業界2番手であり、オーガニック成長に加え、M&Aにより市場シェアを拡大しています。
市場シェアの3割強が多数の中小規模レンズメーカーにまたがっており、当社はこうした競合からのシェア奪取や買収を通じて、継続的にシェア拡大を図り、業界におけるリーダーシップを確固たるものにしていきます。また、今後も革新的な製品やソリューションの提供、顧客ニーズへの対応により、業界でのプレゼンスを強化していきます。
地域別の状況
市場としては成熟しているものの、売上の約7割を占める欧米は今後も重要な市場と位置付けています。なかでも、米国については市場プレゼンスを拡大する余地が十分あり、現地法人の組織体制と販売力の強化を推し進めています。また、アジアにおいては中国市場の成長が著しく、当社はMiYOSMART(後述)をきっかけに中国での売上を大幅に成長させることができています。
今後の見通し
当社のメガネレンズ事業は、当社グループで最も大きな売上規模となっており、ライフケア事業全体の成長をけん引しています。
当社は、製品や業務プロセスにおけるイノベーションを継続的に推進し、パートナーシップを通じて世界中のメガネ店や眼科医療従事者をサポートしています。グローバルな供給体制の拡充や、顧客へのデジタルツールの提供などを通じ、最適なビジネスパートナーとなることを目指しています。これらを実現すべく、デジタル・インフラの整備、コーポレート・ガバナンスの強化、人的資本経営を含むサステナビリティの基盤構築に注力しています。
小児近視進行抑制用レンズであるMiYOSMARTは、競合他社に先駆けて2018年の発売以来、特に中国市場で大きな成長を遂げています。製品ラインナップはサングラス版や調光レンズ版にも拡大し、現在では30カ国以上で販売されています。
今後は、中国市場に加え、保険制度の変更を追い風に欧州での販売促進活動を強化していきます。2022年3月には、MiYOSMARTがフランス保健省から公益性の高い製品として認定されたことにより、近視抑制に関する政府の意識向上と近視治療の保険償還拡大が期待されます。また、スイス政府は2024年7月1日から小児の近視抑制ソリューションに対する保険償還を開始しており、当社の取り組みが政府の近視対策に影響を与えられることが実証されつつあります。
地域の観点では、成長性の高い新興市場、なかでも中国における営業活動を強化し、市場シェアの拡大を図っていきます。また、米国においては現状、独立系のメガネ店への売上比率が高いなか、チェーン店向けビジネスのプレゼンス拡大を目指していきます。さらに、M&Aを通じた顧客へのリーチ拡大を視野に入れています。これらの取り組みにより、一桁半ばの成長率を目指しています。
市場シェア
(2023年度)

(当社推計、金額ベース)
地域別売上高構成比
(2023年度)


* 2024年8月時点本邦未承認品です。
詳しくはMiYOSMARTオフィシャルサイトをご参照ください(英文のみ)
コンタクトレンズ
市場環境
わが国におけるコンタクトレンズ小売市場は、2%程度の緩やかな成長となっています。
少子高齢化が進行する中でも、若年層の近視率の上昇や、遠近両⽤コンタクトレンズの普及による装⽤者年齢の上昇により、コンタクトレンズの需要は今後も伸びていくと推定しています。また、高付加価値レンズの販売増による平均販売単価の上昇も市場の成長につながると思われます。
当社の状況
事業概要
日本全国に約370店舗を展開する、コンタクトレンズ専門小売店アイシティを運営しています。アイシティでは、お客様一人ひとりに合った最適な商品をご提案するコンサルティング販売と、世界中の大手メーカーから取りそろえた幅広い商品ラインナップを強みとしています。店舗は駅の近くや、ショッピングセンター内など、利便性の高い立地にて展開しています。
また、2022年3月より自社ブランドのコンタクトレンズhoyaOne シリーズの製造販売を開始し、現在では6製品を展開しています。

市場ポジション
コンタクトレンズ販売チャネルのうち、最も大きなカテゴリーであるコンタクトレンズ専門店において50%以上のシェアを擁しています。コンタクトレンズ専門店はラインナップの豊富さや価格の優位性などから、今後も眼科チャネル等からのシェアの移転が進むと予想されます。
一方で、近年はインターネット通販のシェア拡大が進んでおり、同チャネルにおける対応が市場ポジションを左右すると思われます。
今後の見通し
当社はこれまで、毎年15-20店舗出店することで面を拡げる戦略をとってきました。今後も引き続き新規出店を進めるとともに、新規のお客様向けのマーケティングを強化していきます。
併せて、自社ブランドシリーズも含めた商品ラインナップのさらなる拡充、乱視用や遠近両用レンズ等の高付加価値商品の推奨強化、ならびに店頭でのサービス向上により、お客様のリピートと顧客単価を向上させ、 継続的な成長を目指していきます。
販売チャネル別売上高
構成比(2023年度)

コンタクトレンズ専門店での
HOYAのシェア
(当社推計、金額ベース)

メディカル関連製品
医療用内視鏡
市場環境
社会の高齢化に伴い、世界的に医療費が増加しています。 各国政府が医療費増加の抑制のために、疾病の早期発見および低侵襲医療を推奨するなか、患者の体にメスを入れずに体への負担を極力抑える低侵襲治療へのニーズから、内視鏡に対する注目が高まっています。
内視鏡機器市場は、先進国において成長が緩やかになっていますが、内視鏡の普及段階にあるアジアにおいて高い成長が続いており、なかでも中国が今後のグローバル市場の成長をけん引すると見られます。
当社の状況
事業概要
消化器、耳鼻咽喉、呼吸器などの検査や処置に使われる医療⽤の軟性内視鏡の研究開発‧製造‧販売をおこなっています。軟性内視鏡は、患者の体内に挿入するスコープと、画像処理等をおこなうビデオプロセッサーを含む本体で構成され、これを医療機関、医療機関の共同購買組織、販売代理店などに対して販売しています。

市場ポジション
最先端の消化器内視鏡、気管支内視鏡、耳鼻咽喉用内視鏡、咽頭ストロボスコープ検査システム、および、洗浄消毒性に配慮した製品を強みに、グローバルでシェア3位となっています。
地域別の状況
地域別に見ると、欧州をはじめとする海外での売上高が大部分を占めています。
今後の見通し
高齢化社会の進展や低侵襲医療への需要拡大により、医療用内視鏡の市場は1桁半ばから後半の成長が予想されます。
短期においては、米州において2022年度に実施した構造改革が着実に実を結び、好転の兆しが見えています。
以上のような環境下で、今後もリユースおよびシングルユース内視鏡の継続的な技術革新、洗浄消毒性に配慮した製品とソリューションの提供、営業力の強化、AIの活用に積極的に取り組んでいきます。
市場シェア(2023年度)

(当社推計、金額ベース)
地域別売上高構成比(2023年度)


PENTAX Medical ONE Pulmo ™
(シングルユース気管支内視鏡)

PENTAX Medical INSPIRA™ Video Processor EPK-i8020c, i20c series scope
(ハイエンドビデオプロセッサー、ビデオ消化器スコープ)

AquaTYPHOON™
(内視鏡管路のブラシレス自動予備洗浄システム)

PENTAX Medical Discovery ™
(AI搭載内視鏡画像診断支援ソフトウェア)
白内障用眼内レンズ
市場環境
世界的な高齢化、新興国での医療インフラの普及、先端医療技術へのアクセシビリティの向上などを背景に白内障用眼内レンズに対する需要は増加しています。白内障は、水晶体が白く濁り視力が低下する病気で、加齢により高い確率で発症し、世界において最大の失明要因となっています。白内障手術により、白濁した水晶体を摘出し、代わりに眼内レンズを挿入します。
従来型の単焦点レンズに加え、近年は三焦点や焦点深度が深いタイプといったハイエンド製品の市場投入により、1桁半ばの市場成長となっています。
当社の状況
事業内容
白内障用眼内レンズ(IOL)の研究開発‧製造‧販売をおこなっています。
30年以上にわたる眼内レンズ事業における知見に基づき、数百万人に及ぶ白内障患者の視力とQuality of Lifeの改善に貢献しています。
HOYAの強みである光学技術と眼内レンズ用インジェクター開発の知見を組み合わせたプリロード式眼内レンズ※はグローバル市場で高い評価を得ており、同製品カテゴリーにおいてグローバル市場でトップシェアを有しています。
※眼内レンズがインジェクターの中にあらかじめ装てんされており、より安全で確実な手術が可能となります。

Vivinex™
市場ポジション
市場シェアは順調に拡大しており、現状はグローバルで3位となっています。当社は主力製品であるVivinex™(2015年に上市)の製品競争力により、市場を上回るペースで成長を続けています。Vivinex™は透見性の高いレンズ素材と独自技術を兼ね備えたインジェクターmultiSert™を組み合わせた製品で、安全で確実な白内障手術を可能にするソリューションを提供しています。
地域別の状況
売上高を地域別に見ると、日本国内での売上が4割となっています。
継続的に販売対象国を拡大させており、海外売上比率が高まってくる見込みです。
今後の見通し
今後は付加価値の高い三焦点眼内レンズ(Vivinex Gemetric)の販売を拡大することで、より幅広い顧客のニーズや期待に応えていきます。
また、すでに営業拠点のある地域の営業人員の強化はもちろん、プレゼンスのない地域についても販売子会社の設置や販売代理店等を通じて順次参入することでTAM(Total Addressable Market)の拡大を図ります。なお、2023年1月には、眼内レンズの需要が高まる韓国に販売子会社を設立しました。
2024年度は期初のサイバー攻撃の影響により成長率が一時的に鈍化することが見込まれますが、今後は眼内レンズの市場成長率(1桁半ば)を超える成長を図っていきます。
市場シェア(2023年度)

(当社推計、金額ベース)
地域別売上高構成比
(2023年度)

セラミックス製人工骨‧金属製整形インプラント
市場環境
日本における高齢化に伴う骨折や疾患の増加により、その治療に有効な整形外科‧脳神経外科向けのインプラントの市場は今後も成長が継続する見通しです。
当社の状況
事業内容
骨の欠損部の補てんや、骨折部の接合に使われるセラミックス製人工骨および金属製のインプラントを開発‧製造し、主に日本国内の医療機関に供給され、多くの患者様の治療に貢献しています。
市場ポジション
当社はセラミックス製市場において、日本で初めて人間の骨とほぼ同成分を持つアパタイト製品を製造‧販売し、常に日本市場をリードしてきました。金属インプラントに関しては2012年に日本ユニテックとの経営統合により市場へ参入し、日本人の骨格に最適な形状やサイズのインプラントの製造‧販売をおこなっています。特に橈骨遠位端骨折向けインプラントでは幅広い製品ラインナップを展開し、市場シェアトップとなっています。(症例ベース‧当社調べ)
今後の見通し
セラミックス製人工骨でのシェアを維持しながら、新たな用途の開拓により、市場の拡大を図ります。金属製インプラントでは製品ラインナップの拡充や営業力の強化により患者様や医療機関のニーズに応えます。またセラミックス製人工骨と金属インプラント両方の製造‧販売をおこなっている強みを活かし、両素材の製品を組み合わせた新しい手術手技の提案により他社との差別化を図ります。

バイオアクティブセラミックス製インプラント「バイオペックス」

橈骨遠位端骨折向け金属製整形外科用
インプラント「HTS Stellar D」
クロマトグラフィ用担体
市場環境
バイオ医薬品の開発‧製造に不可欠な、分離‧精製用担体(クロマトグラフィ用担体)市場は、バイオ医薬品市場の拡大に伴い、今後グローバルで1桁半ば超の高い成長率が見込まれています。
当社の状況
事業内容
クロマトグラフィ用バイオセラミックス担体を製造し、ディストリビューターを介して販売され、世界中の製薬企業や研究機関で採用されています。
市場ポジション
バイオ医薬品の分離‧精製には、さまざまな方法がありますが、当社の球形ハイドロキシアパタイトセラミックス担体は、各種タンパク質に高い吸着特性を有しているため、精製プロセスにおいて、不純物の効率的な除去と高い分離性能を持つユニークな製品として、市場から高い評価を得ています。
今後の見通し
抗体医薬、ワクチン、さらには遺伝子治療など、多様化するバイオ医薬品のニーズに対応するため、顧客や研究機関と協力して、製品‧精製プロセスの開発を加速させるとともに、また増加する需要へ対応するため生産能力を拡大することでさらなる成長を図ります。

クロマトグラフィ用担体(拡大画像)