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【特集】社外取締役座談会

HOYAらしさと革新を両立する
ガバナンスとは

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筆頭独立社外取締役
監査委員会委員長 指名委員 報酬委員
ヘルスケア‧コンプライアンス委員
吉原 寛章

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独立社外取締役
指名委員会委員長 報酬委員 監査委員
ヘルスケア‧コンプライアンス委員
阿部 康行

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独立社外取締役
指名委員 報酬委員 監査委員
長谷川 隆代

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独立社外取締役
指名委員 報酬委員 監査委員
ヘルスケア‧コンプライアンス
委員会委員長
西村 美香

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独立社外取締役
報酬委員会委員長 指名委員 監査委員
佐藤 基嗣

モデレーター:お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。本日は座談会形式で、皆様から社外ならではの視点からご意見をざっくばらんにうかがえれば幸いです。よろしくお願いします。

はじめに、当社の取締役会はモニタリングボードという位置付けですが、取締役会ではどのような議論がなされていますでしょうか?例えば個別の事業戦略や買収案件などにもご意見や助言をされることもあるのでしょうか?また、取締役会の雰囲気はどのような感じでしょうか?

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吉原取締役:取締役会では、すべての重要案件が上がってきています。HOYAの哲学でもある高い収益性や投資効率にこだわりつつ、自由闊達に議論しています。M&A等の投資案件においても、判断基準に合致しなければ大きな声で反対しています。気兼ねなく自由に発言できるのはHOYAの取締役会の特徴かと思います。また、経営トップはもちろん、各事業部の責任者が社外取締役に対してオープンに情報を提供したいという思いが伝わってきます。そうした姿勢がHOYAの健全な企業文化を支えていると感じます。

モデレーター:近年、大型のM&Aの実行はありませんが、取締役会ではM&Aについてどのような議論がされているのでしょうか?

吉原取締役:HOYAの良いところでもあるのですが、検討を重ねて練り上げたうえで付議するのではなく、スピード性重視でとりあえずテーブルに載せて皆の意見を聞き、そのなかで戦略を練り直すパターンが多いように感じます。極めて健全なプロセスだと思います。

一般論として、どの会社であっても担当者が買収価格を正当化できるように将来計画を作ってくる可能性がありますので、提供された数字の根拠を突き詰めますし、HOYAのコアコンピタンス、カルチャーおよび経営姿勢と親和性があるかに注意を払いつつ検討し、提供された数字を鵜呑みにして承認することはありません。

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佐藤取締役:私は3つの観点で見ています。1つ目は、戦略の妥当性。既存事業との親和性とケミストリーを重視しています。2つ目は、適正な価格設定か。将来の見通しが甘くないか?という視点で事業計画の正確性を見極めることが肝要です。そして3つ目は、PMI(Post Merger Integration)。買収後にシナジーを創出する統合プランと体制がしっかりと準備されているか。最低限、この3つが揃っていなければいけません。

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長谷川取締役:HOYAは判断基準のベースとなる既存事業の利益率が高いですよね。「小さな池の大きな魚」の哲学の下、一定以上の収益性を求めるゆえに、投資案件のハードルレートが非常に高いというジレンマがあります。ハードルをクリアするがためにシナジー効果をむやみに大きい数字で見込んでいないか、しっかり見させていただいています。

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阿部取締役:会社を見ていて常々、HOYAの文化は独特だと感じていますが、買収先がこれと合うか合わないかは買収後の成否を大きく左右しますので、その点を注意して見ています。

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西村取締役:長谷川さんのおっしゃった背景もあり、投資に対する社内のハードルレートが非常に高いです。例えば、地域的カバレッジの拡大や製品ラインナップの補完をM&Aを通じて実現し、結果的にハードルをクリアするというストーリーを期待しているのですが、なかなかそのような案件が出てこないのが実情です。

吉原取締役:当社の高度な光学技術、精密加工技術や量産技術といったコアコンピタンス、また経営に対する財務規律の厳しさを買収先企業に上乗せすることで、2〜3年以内に相応の相乗効果が実現できるという確信がなければ、取締役会としては承認できないです。

佐藤取締役:新たな事業の柱を創りたいという池田さんの思いは非常に強いと感じます。ゼロから創り上げるというよりは、M&Aを活用して成し遂げたい、と考えられているようですが、先ほど皆様が挙げられていたハードルレートや利益のダイリューションの問題などもあり、フックを決めかねているステージにあるのだと思います。

モデレーター:ありがとうございます。少し切り口を変えまして、取締役会に臨むにあたって皆様が重視されているポイントをお聞かせいただけないでしょうか?

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吉原取締役:HOYAにはあるべき姿として、高収益・高資本効率という非常に明確な指標がありますので、その達成支援のために社外取締役としてどのように貢献するかを考えています。取締役会に先立って、議論や助言する主な内容をあらかじめ準備し、当日の議論のなかでそれを発展させるようにしています。

阿部取締役:業務執行側が本当に正しく執行をしているかを確認することが、モニタリングボードたるHOYAの取締役会にとって重要なポイントです。とは言え、取締役会の限られている時間のなかで判断することは非常に難しいので、執行側が正しい判断をしたかの客観性を担保するために、できる限り取締役会の外側にある情報の確認作業もおこなっています。

長谷川取締役:その点においては、会社が定期的に開催しているサイトビジット(国内外の工場やR&D拠点などの訪問)はとても役立っています。やはり、資料と現場はかなり違います。私自身が技術畑の出身ですので、現場がどのように動いて成り立っているのか、どのような人が現場をまわしているのかを見ることで事業の理解がより深まります。

西村取締役:取締役会ですと、いわゆる事業責任者や管理責任者といった「報告する人」としか会うことができませんが、サイトビジットでは現場の人と会って交流できます。現場で働いている方に質問を投げかけて、返ってきた答えが取締役会で報告されていることと一貫性があるのかを確認できますし、次の世代のリーダーたちに会えるという側面もあります。

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佐藤取締役:私は執行側ではありませんので、あくまで社外取締役として、事業の1つ1つの執行内容に関しての是非よりも、執行側が適切なプロセスで意思決定をしているか、議論すべき点が議論されているかに重きを置いています。そうした観点でサポートしていきたいと思います。

モデレーター:続きまして、本日のメインテーマに移りたいと思います。社外取締役の皆様から見て、HOYAにとって一番の経営課題は何でしょうか?

吉原取締役:やはり中長期的成長に資する成長ドライバーの創出が最重要課題です。池田さんは試行錯誤しながら、CEO就任以来3年間、社内カンパニー制の導入などさまざまな面から、より一層の経営改善に取り組んできました。M&Aについても随時実行しているものの、既存事業の延長線上にあるボルトオン型のものが中心です。言うなれば、近い将来の収益性を確保しながら、中長期成長戦略を慎重に練っている過程にあるのだと思います。成長領域としては、言い尽くされていますが、やはり「小さな池の大きな魚」― これから急成長する可能性のあるニッチな領域、それもHOYAが得意とするコアコンピタンスを活用し相乗効果が期待できる事業分野に出ていくべきでしょう。

佐藤取締役:収益性が高いゆえに希薄化が懸念となって新規事業に対するハードルが高くなっていることが一番の経営課題だと思います。今はまだ、収益性を伴って成長するための最適解を模索している段階であり、ライフケア、情報・通信の両事業に隣接するホワイトスペースを見つけること、あるいは両分野をつなぐパイプのようなものを見つける必要があります。

阿部取締役:HOYAの歴史を紐解くと、ガラスや樹脂などの加工技術から派生して発展してきています。今も周りに収益性が高いもので、見落としているものがあるかもしれません。一方で、そうした分野を外した飛び地はリスキーであり、注意を要します。

モデレーター:皆様にお答えいただいた直近のアンケートでは、厳しい状況が続いているメディカル関連の事業に関するご指摘もありました。

吉原取締役:経営は短期と中長期のバランスです。中長期成長戦略を着実に実行していくことに加えて、短期においては低収益で立て直しが必要な事業をしっかりフォローしていくべきでしょう。

阿部取締役:私もそう思います。ライフケアで苦労している事業の立て直しについては、経営課題の一丁目一番地です。

長谷川取締役:ポートフォリオをより強固なものとするために組み替えをおこなっていくのはいいと思います。ただ、事業の売却や撤退だけではうまくいかなくて、オーガニックでもM&Aでもいいのですが新しいものを創っていくことが必要だと思います。池田さんもまだ苦慮されている部分でもありますが、その際に軸をどこに置くのかが重要です。

モデレーター:事業ポートフォリオの強化以外の経営課題についてはいかがでしょうか?

西村取締役:会社の「横軸」になる部分、グループ横断的なリスクと機会を重要課題と捉えています。リスクの面では、世の中的に脅威が増えているサイバーセキュリティや、コンプライアンス、機会の面では、人材発掘・人材マネジメントが重要なトピックとなってきています。人材マネジメントについては、CEOサクセッションはもちろん、次世代リーダーのパイプラインをどう多様化させるかについて、CHRO(Chief HR Officer)との対話も交え、議論を進化させています。

長谷川取締役:人的資本に関しては、HOYAはエンゲージメントスコアが70%後半と非常に高くて驚いています。これは一般的に、なかなか見られない数値で、社員が高いモチベーションを持って業務に従事されているということだと思いますので、HOYAの大きな強みと捉えています。CHROは、事業部別で詳細にわたってイシューを分析したうえで、エンゲージメントの向上に努めている印象です。

モデレーター:リスク管理のお話がありましたのでお聞きします。2024年3月に第三者による不正アクセスを起因としたITインシデントが発生しましたが、当社のサイバーセキュリティについてはどのように見られていますか?

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阿部取締役:前提として、ITインシデントは本来起こしてはならないものです。影響は小さかったとはいえ過去にも同様の事例があったことを考えると、今回の件についても正直なところ残念に感じる部分がありました。一方で、サイバーセキュリティは終わりのない戦いで、起こる可能性をゼロにはできないし、ソリューションを入れて「これで万事OK」というものはありません。セキュリティ水準を高めたとしても、常に新しい技術動向を見据えながら、細かな対応をしていく必要があります。

吉原取締役:ITインシデントの再発を防ぐためには、技術的なこと以上に、インシデントに対するレディネスとレジリエンスが当然のように備わっている企業文化を構築していかなければいけません。新しい人材の起用や新しいポリシーの導入が始まりましたので、これをきっかけにサイバーインシデントに対応できる文化の構築を強化していただきたい。

長谷川取締役:本当にその通りで、どれだけ強固なセキュリティシステムを構築したとしても、現場にリスク感覚がないとダメです。例えば、ソフトウェアのアップデートやウイルスチェック、IT機器の適切な管理などを疎かにしていれば、「蟻の一穴天下の破れ」となってしまいます。社員全員がどれだけ深刻に考えるかに尽きます。

西村取締役:阿部さんがおっしゃったとおり、リスクをゼロにすることは不可能です。だからこそ、会社として絶対に守るべきクラウンジュエル(最も価値のある情報やデータ)を明確にするなど、戦略的な視点でリソースの配分をすべきです。また、サイバー攻撃を受けた際に、影響範囲が広がらないようにする仕組みの構築を進めていただきたい。

佐藤取締役:セントラル(本社)でしっかりと発信しつつ、ローカルサーバーの監視のように、現場側も同時にリスクとなり得るポイントを押さえていかなければいけません。フィジカルの世界で穴があっても、それはその人だけの問題となりますが、サイバーセキュリティの場合は穴が開くと、グループ全体に影響を及ぼしますので、意識改革を進めていただきたいと思います。

モデレーター:本日は会社の良い面だけではなく、株主・投資家の皆様に知っていただくべき経営課題やリスクなども非常に率直にお話しいただけました。また、経営課題の攻めと守り、それぞれの課題などについてうかがえて大変に有意義でした。ありがとうございました。

サイバーセキュリティ対策のさらなる強化

2024年3月に発生した、サイバー攻撃によるシステム障害を受け、当社では情報資産の保護と業務継続性の確保を目的に、従来以上にサイバーセキュリティ対策を強化しています。具体的には、全社的なファイアウォールの統合管理やセキュリティソフトを使用したログ監視などを実施し、脆弱性の早期検知と対応力の向上を図っています。
さらに、これらの技術的対策に加え、本社IT 部門を中心とした統合管理状況の可視化と継続的な改善を推進しています。このような取り組みにより、当社はサイバー攻撃への予防・対応力を高め、信頼性の高い業務環境の維持に努めています。