ライフケア事業
新型コロナウイルスの影響
- 新型コロナウイルスの感染拡大以降、経済活動の制限などによりライフケア事業の製品に対する需要が一時的に減少していましたが、ワクチン接種の進捗と経済活動の再開に伴い、事業の正常化が進むと見込んでいます。
- メガネレンズやコンタクトレンズ小売のオンライン化は各国の医療規制により制限されていることなどから、急速ではなく、ゆるやかな進展を想定しています。中長期におよぶ業界構造の変化は見られず、当社のライフケア事業の成長シナリオについても変化はありません。
顧客需要 | コロナ禍による 市場構造の変化 |
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現状 | 今後 | ||
メガネ レンズ |
ワクチン接種の進捗や経済活動再開の度合いにより各地域・国で差があるものの回復傾向。 |
ワクチン接種の進捗と経済活動再開とともに、本格的な回復を見込む。 | 特になし。 |
コンタクト レンズ |
外出機会の減少によりコンタクトレンズ使用頻度が減り一時的に需要減少。緊急事態宣言下においては一部店舗休業・営業時間短縮しているが、オンライン販売(アイシティ会員向け)の促進で対応している。 | ワクチン接種の進捗により外出機会が増えることで、21年度下期以降需要の回復を見込む。 | 特になし。 オンライン化の加速などは見られず、日本では依然としてコンタクトレンズ専門店が最大の販売チャネル。 |
内視鏡 | 徐々に病院での設備投資環境の回復が見られる。 | 先送りになっていた検査件数の正常化により病院での設備投資再開が見込まれ、需要回復。 | 主要市場である既存のリユーサブル内視鏡では特になし。使い捨て内視鏡はコロナを追い風に市場が拡大している模様。 |
眼内レンズ | ワクチン接種の進捗度合いにより各地域・国で差があるものの、回復傾向。 | 患者である高齢者を中心にワクチン接種が進むとともに回復を見込む。 先送りになっていた白内障手術の一時的な繰延需要を予想。 |
特になし。 |
ヘルスケア関連製品
(当社の製品については、当社WEBサイトの「HOYAの事業」にも各製品の紹介が記載されていますので、よろしければご一読ください。)
メガネレンズ
事業内容
メガネレンズの研究開発・製造・販売をおこなっています。
1枚のレンズに1つの補正機能を持つ単焦点レンズや、1枚のレンズで遠くから手元までシームレスに見えるように度数が変化する累進多焦点レンズなどを取り扱っています。
地域別に見ると、海外での売上高が大きく、約87%を占めています。

サプライチェーン

マーケット状況
新型コロナウイルス感染拡大抑制のために各国において社会・経済活動の制限が実施されました。外出制限や店舗の一時的な休業、そしてソーシャルディスタンスの措置が世界中のアイケア業界に影響を与え、その結果当社の売上も大きな影響を受けました。しかしながら、2020年度第1四半期以降、売上は回復傾向にあり、ワクチン接種の広がりと感染拡大の抑制とともに成長に転じると見込んでいます。
多くの国では2022年までにコロナ前の経済レベルに戻るとの見方がされていますが、その後は、世界的な老齢人口の増加、新興国の経済成長による購買力の増加、目の健康に対する意識の高まりや、デジタル機器の使用時間の増加などにより、メガネレンズの需要は継続して世界的に増加し、中長期的にメガネレンズ事業は一桁前半から半ばのオーガニック成長に戻ると想定しています。
地域により成長速度は異なりますが、成熟市場である北米、欧州、日本は引き続き市場の中で重要な役割を果たすと想定しています。また、南米やアジアなどの新興国では、視力矯正製品がより入手しやすくなり、また中間所得層人口が増加する中で、さらなる成長が期待されます。
HOYAのポジションと市場シェア
当社は業界2番手であり、オーガニック成長に加え、2013年にSEIKOのメガネレンズ部門、2017年には⽶Performance Optics社など、M&Aにより市場シェアを拡大しています。
HOYA今後の見通し
メガネレンズは、ライフケア事業売上の約50%を占める製品であり、事業の拡大をけん引する成長ドライバーです。
市場成長の続くアジア、特に中国や南⽶において営業活動を強化し、また⽶州では当社は独立系のメガネ店のチャネルにおいて強いプレゼンスを持っていますが、チェーン店チャネルでの市場シェアの拡大余地が大きいため引き続き注力していきます。ターゲットエリアとビジネス機会への注力により市場以上のオーガニック成長を目指します。また、さらなる成長のためのM&Aの機会を引き続き追求していきます。
生産面では、拡大する需要に対応するためベトナム第2⼯場を建設し、2020年7月より生産を開始しました。
(2020年度)


(当社推計、金額ベース)
近視の急速な進行は世界的な健康課題となっています。2050年には世界人口の半分にあたる50億人が近視の影響を受ける可能性があると言われています。
近視進行抑制分野においてHOYAは香港理工大学と共同で革新的な小児用近視進行抑制メガネレンズ「MiYOSMART」を開発しました。「MiYOSMART」は、子供の近視の進行を抑制することが実証されています。2018年に商品化され、現在はアジア・欧州を中心とした一部の市場で販売しています。今後は順次認可を取得し、販売地域を拡大していく予定です。
(2021年7月現在、日本・米国では未承認です。)


コンタクトレンズ
事業内容
コンタクトレンズ専門小売店「アイシティ」を日本国内において展開しています。
「アイシティ」では、お客様一人ひとりに合った最適な商品をご提案するコンサルティング販売と、世界中の大手メーカーから取りそろえた幅広い商品ラインアップを強みとしています。
店舗は駅の近くや、ショッピングセンター内など、利便性の高い立地にて展開しています。

マーケット状況
国内コンタクトレンズ市場規模は約4,000億円でしたが、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年度は在宅勤務や自宅学習機会の増加、外出機会の減少などによりコンタクトレンズの使用頻度が減少したことで一時的に市場が縮小しました。しかしながら、若年層の近視率の上昇や遠近両⽤コンタクトレンズの普及による装⽤者年齢の上昇といったコンタクトレンズ需要増加の中長期的なトレンドは今後も変わらないと想定しています。さらに高付加価値レンズの販売増による平均販売単価の上昇などで今後も僅かながら拡大していくと推定しています。
販売チャネル別には、最も大きな割合を占めるコンタクトレンズ専門店が今後もシェア拡大により安定的に成長すると見込んでいます。
構成比(2020年度)

(当社推計、金額ベース)
HOYAのポジションと市場シェア
当社は、実店舗での販売を行う小売チャネルにおいてシェア1位となっています。
付加価値製品の訴求などによる既存店の売上成長に加えて、M&Aを含む新規出店により売上の拡大を図っています。また、近年拡大しているインターネット通販に対応し、「ほしいとき便」としてオンライン販売サービスを提供しており、特にコロナ禍において多くの方々にご利用いただいています。


HOYA今後の見通し
今後も、既存店の売上成長とともにM&Aを含む新規出店により、継続的に5%程度の売上成長を図っていきます。
新規出店時には、コンタクトレンズ装用人口、市場成長率、競合状況を切り口に地域を細かく分析し、都心部や地方都市、大型ショッピングセンターを中心に出店を行うとともに、同一商圏内での店舗移動を適宜実施することで効率性を向上していきます。また、地域に根ざしたコンタクト専門店などを対象としたM&Aの機会を積極的に活用し、成長を加速させていきます。
メディカル関連製品
(当社の製品については、当社WEBサイトの「HOYAの事業」にも各製品の紹介が記載されていますので、よろしければご一読ください。)
医療用内視鏡
事業内容
消化器、耳鼻咽喉、呼吸器などの診断や処置に使われる医療⽤の軟性内視鏡の研究開発・製造・販売をおこなっています。
内視鏡はスコープとプロセッサーで構成されています。

サプライチェーン

地域別売上高
地域別に見ると、海外での売上高が大部分を占めています。
マーケット状況
社会の高齢化に伴い、世界的に医療費が増加しています。
各国政府は、医療費増加の抑制のために、疾病の早期発見および低侵襲医療を推奨しています。
また、低侵襲医療は、患者様の体にメスを入れずに体への負担を極力抑える医療としてニーズが高まっており、これらのニーズに応えることができるものとして、内視鏡のニーズが高まっています。
市場は、日⽶欧などの先進国・地域において成長率が緩やかになっていますが、内視鏡の普及段階にあるアジアにおいては、高い成長率が続いています。
2020年度は新型コロナウイルスの影響で病院を取り巻く経営環境の変化により投資の抑制がみられましたが、中長期にはグローバルで5%前後の成長率が続くと想定しています。(当社推計)

顧客に関しては、主に北⽶において共同購買組織経由での取引が増加しており、こうした変化に対応した営業体制を構築することで売上成長につなげていきます。
製品に関しては、2021年5月に当社初となる使い捨て気管支内視鏡「PENTAX Medical ONE Pulmo」のCEマーク認証を欧州にて取得しました。使い捨て内視鏡は現状では従来型の内視鏡を置き換えるほどの存在には至っていませんが、中長期的には存在感が高まってくると予想しており、その布石として位置づけています。

HOYAのポジションと市場シェア
高画質化や、超音波内視鏡、画質・外径・チャンネルサイズのバランスの取れた細径内視鏡を強みに、当社は業界2番手グループとなっています。
HOYA今後の見通し
売上の約半分を占める欧州において安定的に収益を確保しつつ、アジア、⽶州での営業活動を強化することで成長を図ります。
軟性内視鏡市場の主戦場である消化器向け製品への取り組みを着実に行いながら、内視鏡と組み合わせて使⽤する処置具や、気管支以外の部位についても使い捨て内視鏡のさらなる開発を進め、差別化を図っていきます。

(当社推計、金額ベース)
2021年5月、中国のVedkang社(Jiangsu Vedkang Medical Science and Technology Co., Ltd)と内視鏡用処置具の開発と製造を担う合弁会社設立に合意いたしました。新会社は、PENTAX Medicalの販売網を通じて、Vedkang社が開発・製造する内視鏡用単回使用処置具を世界へ供給していきます。
白内障用眼内レンズ
事業内容
白内障用眼内レンズ(IOL)および眼科医療機器の研究開発・製造・販売をおこなっています。
約35年に亘る眼内レンズの開発と製造に基づいて、HOYA Surgical Opticsは数百万に及ぶ白内障に苦しむ患者様の視力とクオリティ・オブ・ライフの改善に貢献する事をミッションとしています。
白内障は加齢により高い確率で発生し、世界において最大の失明要因となっています。白内障は手術により治療する事が可能で、世界で最も多く実施されている手術の一つです。白内障手術により、白濁した水晶体を取り出し、代わりに眼内レンズを挿入します。
HOYAの強みである光学技術と眼内レンズ・インジェクター開発の知見を組み合わせたプリロード式眼内レンズ*はグローバル市場で高い評価を得ています。この製品カテゴリー(プリロード式眼内レンズ)においてはグローバル市場でトップシェアを有しています。
*プリロード式とは、眼内レンズがインジェクターの中に予め設置されており、術者による、より安全で確実な手術が可能となります。

サプライチェーン

地域別売上高
売上高を地域別に見ると、日本国内での売上が約半分となっています。
マーケット状況
2020年度は新型コロナウイルスの影響で白内障手術件数が減少し、当事業は減収となりましたが、感染終息とともにコロナ前の成長シナリオに戻るものと想定しています。
世界的な高齢化、新興国での医療インフラの普及、先端医療技術へのアクセシビリティの向上などを背景に年3%程度の成長を続けている市場です。
そして多焦点や焦点深度が深いタイプの眼内レンズなどのハイエンド製品により、さらなる市場の成長が期待されています。
HOYAのポジションと市場シェア
当社は主力製品であるVivinex™(2015年に上市)の製品競争力により、市場を上回るペースで成長を続けています。Vivinex™は透見性の高いレンズ素材と独自技術を兼ね備えたインジェクターmultiSert™を組み合わせた製品で、安全で確実な白内障手術を可能にするソリューションを提供しています。
市場シェアは順調に拡大しており、現状はグローバルで3位となっています。
地域別売上高構成比(2020年度)


(当社推計、金額ベース)
HOYA今後の見通し
今後はさらに利益性の高い老視矯正眼内レンズ市場向けの三焦点眼内レンズを製品ポートフォリオに追加し、顧客のニーズや期待へ包括的に応えてまいります。
また、既に営業拠点のある地域の営業人員の強化や、直接/間接(販売代理店との協業)問わず新たな地域に順次参入することで顧客へのリーチを拡大し、売上拡大を図ります。今後マーケット拡大が見込まれる中国においては、2020年5月に販売代理店のGeMax社と合弁会社を設立し、売上増に寄与しています。
また2019年1月に買収した白内障手術に使われる器具等を取り扱う、Fritz Ruck社(独)、Mid Labs社(⽶)とのシナジー創出を引き続き追求していきます。