情報・通信事業

新型コロナウイルスの影響

  • 事業により強弱があるものの、全体として需要面での大きな影響は出ていません。
  • 新型コロナウイルス感染拡大終息後も在宅勤務や自宅学習などが一定程度続き、半導体ブランクスやHDD基板の需要の増加が継続すると見ています。
顧客需要 コロナによる市場構造の変化
現状 今後
半導体
ブランクス
ブランクスの需要ドライバーであるEUV研究開発活動への影響はなく、引き続き好調。 活発なEUV研究開発活動により、強い成長が継続。 新型コロナウイルスによる市場構造の変化なし。なお、米中摩擦と半導体の世界的な不足で半導体製造拠点の地理的多様化が予想される。
FPDマスク パネルメーカーがパネル価格の上昇を受けて量産活動に注力し、研究開発用途のマスク需要が低下。 パネルの需給関係と価格の正常化とともに研究開発需要の回復を見込む。 特になし。
HDD基板 在宅勤務等、自宅学習などにより、データセンター向け3.5”基板の需要拡大。 強い成長モメンタムが継続。 特になし。
映像 行動制限等に伴う撮影機会の減少により、コンパクトデジタルカメラや交換レンズ向けの需要が減少したが、足元では回復傾向。 旅行の再開などに伴う市場の回復を見込むが、スマートフォンカメラによる侵食が続き、デジタルカメラ市場の再拡大は見込まない。監視カメラ向けの成長は続く。 デジタルカメラ市場の縮小が短期的に加速したものの、市場構造の変化は無し。一方で監視カメラが新型コロナウイルス感染抑制対策として使われるなど新しい用途が拡大。

エレクトロニクス関連製品

(当社の製品については、当社WEBサイトの「HOYAの事業」にも各製品の紹介が記載されていますので、よろしければご一読ください。)

半導体マスクブランクス

事業内容

半導体マスクブランクスの研究開発・製造・販売をおこなっています。

半導体の製造⼯程において必要不可欠なフォトマスクは、半導体の微細で複雑な回路パターンを半導体ウエハに転写する際の原版となるもので、マスクブランクスはフォトマスクのベースとなる部材です。

マスクブランクスは回路パターンごとに作られるため、半導体メーカーやファウンドリなどの顧客による新製品の開発、EUV(極端紫外線)露光などの新しい製造技術の研究開発においても必要とされます。

サプライチェーン

原材料メーカー→マスクブランクスメーカー→半導体メーカー・ファウンドリ

※フォトマスクメーカーを経由する場合もあります。

マーケット状況

2020年のエレクトロニクス市場は、5Gスマートフォン市場の立ち上がりや新型コロナウイルスによる在宅勤務や自宅学習機会の増加により、パソコンやデータセンター関連機器の需要が増加しました。これによりメモリやロジックの需要が増加したことで、2020年の半導体市場は全体として5%の成長となりました。2021年は、各国において落ち込んだ自動車をはじめとした最終製品需要の回復や5Gスマートフォンのさらなる販売増加などで、半導体市場成長の加速が見込まれています。

ブランクス市場に関しては、半導体メーカー、ファウンドリによる、最先端の製造技術であるEUV露光を使った、電子回路のさらなる微細化に向けた研究開発活動が活発に行われており、ブランクスは顧客の研究開発需要が重要な需要ドライバーであることから、今後も市場の成長が見込まれています。

HOYAのポジションと市場シェア

当社の強みである、高品質の製品を安定して大量に生産する能力を活かし、高い市場シェアを長期にわたって保持しています。

中でもEUVブランクスは、既に20年近く研究開発活動を続けており、業界のリーダーとしての位置を築くことができています。

また、EUVとオプティカル(EUVではない既存の露光技術)の両製品を展開する唯一のメーカーとして、プレゼンスがいっそう高まっています。

HOYA今後の見通し

半導体の微細化の進展に伴い、今後もEUV向けマスクブランクスの強い需要が継続すると見ています。

市場シェア(オプティカル)
(2020年度)
市場シェア(オプティカル)(2020年度)
(当社推計、金額ベース)
市場シェア(EUV)
(2020年度)
市場シェア(EUV)(2020年度)
(当社推計、金額ベース)
半導体市場・HOYAブランクス事業成長率
半導体市場・HOYAブランクス事業成長率

出典:WSTS

HOYA EUV ブランクス売上・EUV露光機売上累計(数量)
HOYA EUV ブランクス売上・EUV露光機売上累計(数量)

マスクブランクスの売上は、顧客の開発スピードに応じて大きく変化し、また消耗品ではないため、必ずしも半導体産業全体の動きに連動せず、精緻な予測が困難ですが、EUV向けについては、EUV露光機の累計設置台数をEUV市場成長の一つの目安とみています。

このような環境のもと、当社はEUV向けマスクブランクスの製造ラインを増設し、2020年に新製造ラインの稼働を段階的に開始しています。またさらなる需要の拡大が見込まれているため、2023年の稼働開始に向けて製造ラインの再増設を進めています。

FPDフォトマスク

事業内容

LCD*1やOLED*2などFPD*3の製造に⽤いるフォトマスクの研究開発・製造・販売をおこなっています。

FPDフォトマスクは、TV、スマートフォン、ノートPCなど向けのFPD製造時に、回路パターンを基板に転写するための原版として使われます。

  • *1 LCD:Liquid Crystal Display=液晶ディスプレイ
  • *2 OLED:Organic Light-Emitting Diode=有機EL
  • *3 FPD : Flat Panel Display=フラットパネルディスプレイ,薄型ディスプレイ

サプライチェーン

原材料メーカー→フォトマスクブランクスフォトマスクメーカー→パネルメーカー

HOYAは、原材料メーカーから基板を仕入れ、基板に対して研磨・成膜・レジスト塗布を行います(ブランクス製造)。完成したブランクスに回路パターンの描画・現像・エッチング・レジスト剥離洗浄を行い、パネルメーカーに出荷します。(フォトマスク製造)

用途別売上高構成比

⽤途別の売上高構成比は次の通りです。
スマートフォン向けが引き続き拡大し、最も大きな割合を占めています。

マーケット状況

2020年度においては、新型コロナウイルスによるディスプレイ需要の増加によりパネル価格が上昇し、パネルメーカーが量産活動に注力したことで、フォトマスクの研究開発活動需要が低下しました。これによりFPDフォトマスク市場は縮小しました。

用途別売上高構成比(2020年度)
用途別売上高構成比(2020年度)

今後については、パネルの需給関係ならびに価格が落ち着くにつれてパネルメーカーの研究開発需要が回復すること、スマートフォンなどに使われる中小型OLED向けの需要の増加などで市場が成長するとみています。

HOYAのポジションと市場シェア

当社は高精度品に強みがあり、トップクラスのシェアを持っています。

HOYA今後の見通し

今後も成長が見込まれている第6世代(Gen. 6)の高精度品、地域的には中国市場に注力することで、堅調な事業の成長を図ります。

市場シェア(2020年度)
市場シェア(2020年度)
(当社推計、金額ベース)

パネルの世代について

FPD(LCD,OLEDなど)の製造ラインは、マザーガラスの大きさによって世代(Gen.)別に分類されています。テレビの大画面化の進展や、1枚あたりのパネル配置数増加による生産性向上のために、マザーガラスの大型化が年々進んでいますが、
当社の得意とするGen. 6を中心とした中小型パネルについても主にスマートフォン向けのOLED需要がけん引し今後も成長が期待されます。

HDD用ガラス基板

事業内容

HDD(Hard Disc Drive)ガラス基板の研究開発・製造・販売をおこなっています。HDDはノートPCやサーバーの記録媒体として使われています。

データセンターサーバー向けの3.5インチは2017年の本格参入以来、高成長を続けており、2020年度には金額ベースで事業部門売上高の半分以上を占めるまでになりました。

サプライチェーン

原材料メーカー→基板メーカー→メディアメーカー→HDDメーカー

HOYAは、原材料メーカーから基板原材料を仕入れ、これに対し、円盤形加⼯・強化・研磨などを行い出荷します(基板製造)。
メディアメーカーは、基板に対して磁性膜などの製膜、バーニッシュ(仕上研磨)などを行い出荷します(ハードディスク製造*)。
HDDメーカーは、ハードディスクやヘッドなどの部材の組立、完成品テストを行い出荷します。

*ハードディスク製造は、HDDメーカーによって行われる場合もあります。

用途別売上高構成比

当社2.5インチ基板の用途別の売上高構成比は右の通りです。

当社の3.5インチ基板は、データセンターにおいてバックアップなどに⽤いられるニアラインサーバーHDDに使われています。

売上は順調に拡大しており、2020年度第4四半期では事業部門売上高の約60%となりました。

HDD2.5インチ基板
用途別売上高構成比(2020年度)
HDD2.5インチ基板用途別売上高構成比(2020年度)

マーケット状況

2.5インチHDD市場は、ノートPC、外付けHDD、ミッションクリティカルサーバー、ゲームの領域において、データの読み込み/書き込み速度が速いSSDへの置き換えが進んでおり、縮小しています。

他方、3.5インチHDD市場においては、バックアップ⽤途で比較的アクセス頻度が少ないニアラインサーバーでは、SSDに対して価格優位性のあるHDDが使われています。
大規模クラウドサービスの事業者によるデータセンター関連への投資は短期的には変動が大きいものの、中長期的には世の中のデータ生成量拡大に伴い、継続的な市場の拡大が見込まれています。

HOYAのポジションと市場シェア

現在、2.5インチ基板はすべてガラス製となっています。当社は唯一のガラス基板メーカーとして、HDD業界を縁の下から支えています。
3.5インチ基板は、価格面で優位なアルミニウム素材がすべてを占めていましたが、高剛性で基板の薄型化による多枚数化を可能とする当社のガラス基板のHDDへの採⽤が進み、ニアラインサーバーにおいてシェアを40%まで高めることができました。HDDの大容量化の進展によりさらなるシェアの拡大を見込んでいます。

ニアライン向け3.5インチ基板
市場シェア(2020年度)
ニアライン向け3.5インチ基板市場シェア(2020年度)
(当社推計、金額ベース)

HOYA今後の見通し

2.5インチ基板製品においては、PCやミッションクリティカルサーバーでHDDからSSDへの置き換えが今後も進み、売上の継続的な減少を見込んでいます。

3.5インチ基板においては、継続的な市場の拡大により売上の成長を見込んでいます。中期的には、新たな顧客の獲得により成長の加速を見込んでおり、既存製造設備の転換やラオス新⼯場を活⽤することで、需要の増加に対応していきます。

3.5インチ市場におけるガラス基板の可能性

世界で生成されるデータ量と保存量の拡大に対応するため、HDDメーカーは1台あたりのデータ容量がより大きい製品を継続的に市場に投入しています。HDD1台あたりのデータ容量増加は、ディスクの記録密度と面積の増大により実現されてきましたが、現状は記録密度向上技術の開発が停滞しており、記録面積の拡大が容量増加のカギとなっています。

3.5インチ市場では、現在はディスクの素材は主にアルミニウム合金ですが、さらなる記録面積の増加は、ディスクの薄型化により搭載ディスク枚数を増加させることで実現されるため、アルミニウム合金よりも剛性があり薄型化の可能なガラスが必要とされています。

具体的には、1つのHDDに搭載するディスクの枚数が10枚(基板の厚み0.5mm)が閾値となり、これ以降はガラス基板が必要とされます。(物質の剛性を表すヤング率:ガラス95GPa、アルミニウム合金は71GPa)また、記録密度向上のための技術HAMR(Heat Assisted Magnetic Recording)が実現し製品化された場合、同技術は磁性膜の製造プロセスで高温を必要とするため、耐熱性の高いガラス基板が唯一の選択肢となります(アルミニウム合金の耐熱温度は290度に対してガラスは691度)。

映像関連製品

(当社の製品については、当社WEBサイトの「HOYAの事業」にも各製品の紹介が記載されていますので、よろしければご一読ください。)

映像関連製品(光学ガラス材料・光学レンズ・各種レーザー機器など)

事業内容

各種カメラ⽤の光学ガラス材料と光学レンズの研究開発・製造・販売をおこなっています。

サプライチェーン

原料メーカー→メーカー→レンズメーカー→カメラメーカー

HOYAは、光学ガラス原料メーカーから原料を仕入れ、調合、溶解を行い、レンズ材料やレンズ製品を製造し、レンズメーカーやカメラメーカーに出荷します。

用途別売上高構成比

用途別の売上高構成比は右の通りです。
コンパクトデジタルカメラ向けや交換レンズ向けなど、以前は売上の大部分を占めたデジタルカメラ関連は減少傾向にあり、売上高構成比は約30%になりました。

一方で新たな⽤途である監視カメラ向けは、高画素化によりガラス非球面レンズの需要が拡大しており、交換レンズと同規模にまで拡大しました。

マーケット状況

改善傾向にあるものの、交換レンズ、コンパクトデジタルカメラは新型コロナウイルスの影響により撮影機会が減少したことで、2020年度の前半に大きく需要が減少しました。監視カメラも同様に、2020年度の前半に新型コロナウイルスの影響を受けましたが、急速に回復が進んでおり、中期的には成長市場との認識です。

用途別売上高構成比(2020年度)
用途別売上高構成比(2020年度)

HOYAのポジションと市場シェア

光学ガラス組成の研究開発から、レンズ完成品の製造に至るまでを一貫して手掛け、多品種・大量生産を可能とする体制を整えています。

当社は、ガラス非球面モールドレンズ(GMO)に関して強みを持ち、高いシェアを維持しています。

GMOは、高温で軟化させた光学ガラスを直接プレス成形し、研磨を行わずに光学レンズ製品にするものです。収差補正に優れているため、光学系に使⽤するレンズ枚数を減少させ、最終製品であるカメラの小型軽量化・高機能化に貢献しています。

ガラス非球面モールドレンズシェア
(デジタルカメラ関連において)
(2020年度)
ガラス非球面モールドレンズシェア(デジタルカメラ関連において)(2020年度)
(当社推計、金額ベース)

HOYA今後の見通し

デジタルカメラ向け製品は、スマートフォンカメラの高画質化・多眼化により継続的にコンパクトデジタルカメラ向け、レンズ交換式カメラ向けの売上が減少する見込みです。

一方で新⽤途である監視カメラ向けは監視カメラの高画素化や設置数の増加により堅調な成長を見込んでいます。

さらに、先進運転支援システム(Advanced Driver-Assistance System: ADAS)、モバイル機器向け顔認証やAR⽤途での当社製品の採⽤に向けて営業活動を強化しています。なかでもADASに使われる画像認識⽤の車載カメラ市場でのポテンシャルに期待しており、同技術が本格的に実⽤化される数年先での当社業績への本格的な貢献を見込んでいます。