財務報告
HOYAグループと連結範囲の状況
当社グループは、当期末現在でHOYA株式会社および連結子会社143社(国内7社、海外136社)ならびに関連会社18社(国内5社、海外13社)により構成されています。
ライフケアおよび情報・通信の各事業部門が、それぞれの責任のもと世界各国に展開する子会社を統括する経営管理体制をとっており、米州・欧州・アジアの各地域の地域本社が、国・地域とのリレーションの強化、法務支援および内部監査等を行い、事業活動の推進をサポートしています。また、欧州地域本社(オランダ)にはグループのフィナンシャル・ヘッドクォーター(FHQ)を置いています。
国際会計基準の適用
当社グループでは、2011年3月期から会社計算規則第120条第1項の規定により国際会計基準(IFRS)に準拠して連結計算書類を作成しています。これに伴い、事業別の概況における報告セグメントについても、IFRSに基づき、ライフケア事業、情報・通信事業およびその他事業の3つの報告セグメントに区分しています。
ライフケア事業ではメガネレンズ、コンタクトレンズ等のヘルスケア関連製品および眼内レンズ、内視鏡等のメディカル関連製品を取り扱い、情報・通信事業では、半導体やFPD、HDD等のエレクトロニクス関連製品およびデジタルカメラ用レンズ等の映像関連製品を取り扱っています。その他事業は、主に音声合成ソフトウェア、情報システムサービスを提供する事業です。
2021年3月期の業績について
HOYAグループの売上収益は5,479億21百万円と、前期に比べて5.0%の減収となりました。
利益については、税引前当期利益は1,592億18百万円、当期利益は1,252億21百万円となり、前期に比べてそれぞれ8.1%、9.3%の増益となりました。税引前当期利益率は29.1%となり、前期の25.5%から3.6ポイント上昇しました。
ライフケア事業の売上収益は3,418億1百万円となり、8.9%の減収となりました。セグメント利益は635億44百万円と2.1%の増益となりました。
メガネレンズは、国・地域により差はあるものの売上収益は回復傾向にあります。しかし、上期前半に新型コロナウイルス感染拡大抑制のために各国で経済活動の制限が実施され、顧客である眼鏡販売店の臨時休業や外出制限などにより、当社の販売も大きな影響を受けたことから、通期では減収となりました。
コンタクトレンズは、売上収益は回復傾向にありますが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う専門小売店「アイシティ」の店舗の臨時休業や時間短縮営業をおこなったことなどから減収となりました。
医療用内視鏡は、全体として売上収益は回復傾向にありますが、国内外において新型コロナウイルス感染拡大により、当社の販売活動が大きな影響を受けたことや、病院を取り巻く経営環境の変化で投資への抑制がみられたことなどから減収となりました。
白内障用眼内レンズは、海外を中心に販売が回復傾向にありますが、上期前半に国内外での新型コロナウイルスの影響により、白内障の手術数が減少し、当社販売も減少したことで、通期では減収となりました。
情報・通信事業の売上収益は2,009億65百万円となり、前期に比べて2.2%の増収となりました。セグメント利益は949億5百万円となり、前期に比べて7.7%の増益となりました。
半導体用マスクブランクスは、EUV(Extreme Ultraviolet)向けを含む先端品における活発な研究開発や量産開始のための需要を取り込んだことで、前期に比べて大幅な増収となりました。
FPD用フォトマスクは、巣ごもり需要に起因するTVパネル市場価格の上昇により、顧客が量産活動を優先する動きがみられました。その結果、研究開発向けのフォトマスク需要が減少し、減収となりました。
ハードディスク用ガラスサブストレートは、今後大きな成長が見込まれる3.5インチ製品は最終顧客であるデータセンターでニアライン向けの需要が続いたことにより売上収益が大きく増加しました。2.5インチ製品はHDD(Hard Disk Drive)からSSD(Solid State Drive)への置き換えの加速、上期前半の新型コロナウイルス感染拡大によるサプライチェーンの乱れによる影響などで減収となり、事業全体でわずかに減収となりました。
カメラ向けのレンズは、コンパクトデジタルカメラ向け・交換レンズ向けともにスマートフォンによる侵食の影響が続いています。また、回復傾向にありますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による顧客の生産拠点の稼働率の低下、販売店の休業、外出制限による撮影機会の減少などによりカメラ製品の需要と販売が減少したことなどで、当社のカメラ向けレンズの販売も落ち込み減収となりました。
(製品ごとのマーケット状況については、事業概況をご一読ください)

親会社の所有者に帰属する当期利益



財産の状況
当期末では、総資産は前期末に比べて422億82百万円増加し、8,532億90百万円となりました。
非流動資産は、88億69百万円増加し、2,987億5百万円となりました。これは主として、有形固定資産―純額が126億55百万円、長期金融資産が60億30百万円増加した一方、のれんが63億94百万円、無形資産が26億86百万円減少したことによるものです。
流動資産は、334億13百万円増加し、5,545億84百万円となりました。これは主として、現金及び現金同等物が169億15百万円、売上債権及びその他の債権が139億11百万円、その他の短期金融資産が25億93百万円増加したことによるものです。
資本合計は、431億47百万円増加し、6,724億12百万円となりました。これは主として、利益剰余金が342億16百万円、累積その他の包括利益が262億65百万円増加した一方、自己株式が155億97百万円増加したことによるものです。
親会社の所有者に帰属する持分合計は429億59百万円増加し、6,880億円となりました。
負債は、8億65百万円減少し、1,808億78百万円となりました。
当期末の親会社所有者帰属持分比率は80.6%となり、前期末の79.5%から1.1ポイント上昇しました。


キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物は、為替変動による影響額105億66百万円を含め、前期末に比べ169億15百万円増加し、3,348億97百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,518億12百万円の収入(前期比115億53百万円収入減)となりました。これは、税引前当期利益1,592億18百万円(前期比119億50百万円収入増)、減価償却費及び償却費363億36百万円(前期比19億63百万円収入増)、減損損失81億66百万円(前期比78億66百万円収入増)などで資金が増加した一方、売上債権及びその他の債権の増加額97億88百万円(前期比139億75百万円収入減)、仕入債務及びその他の債務の減少額63億52百万円(前期比115億4百万円支出増)、支払法人所得税348億75百万円(前期比117億6百万円支出増)などで資金が減少したことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、297億90百万円の支出(前期比175億94百万円支出減)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出312億46百万円(前期比139億31百万円支出減)などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,156億73百万円の支出(前期比302億5百万円支出増)となりました。これは、自己株式の取得による支出766億75百万円(前期比323億92百万円支出増)、支払配当金337億20百万円(前期比3億22百万円支出減)などによるものです。

設備投資/減価償却費等
当期の設備投資額(有形固定資産のほか無形資産を含む)は400億93百万円となりました。前期に比べて140億55百万円減少しました。
当期は、ライフケア事業への投資が126億44百万円と全体の31.5%を占め、情報・通信事業への投資が 270億53百万円と全体の67.5%となりました。
これらの所要資金はすべて自己資金にて賄っています。
ライフケア事業については、主にメガネレンズ増産のための投資などを行いました。
情報・通信事業では、主にEUV向け半導体用マスクブランクスのシンガポール工場における製造設備やデータセンター向けハードディスク用ガラスサブストレートのラオス新工場の立上げに伴う製造設備等への投資を行いました。
当期の減価償却費及び償却費(減損損失を含む)は、前期に比べて28.3%増加し、445億2百万円となりました。

剰余金の配当等の決定に関する方針
HOYAグループはグローバルに事業を展開するとともに、事業ポートフォリオを時代・環境の変化に即した形に変えていくことで、HOYAグループの企業価値の最大化を目指しています。
資本政策につきましては、財務の健全性や資本効率など当社にとって最適な資本構成を追求しながら、会社の将来の成長のための内部留保の充実と、株主への利益還元との最適なバランスを考え実施していくことを基本としています。
また、株主の皆様からお預かりした資産を使ってどれだけ利益を上げたかという資本効率重視の経営はもとより、さらに一歩踏み込んで、会社が生み出す利益が株主の期待収益である資本コストをどれだけ上回ったかという、株主価値重視の経営(SVA=Shareholder Value Added:株主付加価値)を推進し、企業価値の最大化を目指しています。
将来の成長のための内部留保については、成長分野における、シェア拡大、未開拓市場への参入、新技術の育成・獲得のための投資に資源を優先的に充当していきます。既存事業の成長に加え、事業ポートフォリオのさらなる充実のためのM&Aも積極的に可能性を追求していきます。一方、安定収益事業と位置付けています「情報・通信」分野においては、競争力の源泉となる技術力のさらなる強化のための設備投資ならびに次世代技術・新製品の開発に向けた開発投資を継続していきます。
株主還元につきましては、当期の業績と内部留保の水準、ならびに中長期的な資金需要および資本構成等を総合的に勘案し、余剰な資金については「配当」や「自己株式取得」等を通じ積極的に株主に還元することを基本としています。
配当金につきましては、既に実施済みの中間配当金1株当たり45円とあわせまして、年間配当金は1株当たり90円とさせていただきました。連結配当性向は26.8%となりました。
自己株式取得につきましては、当年度内に取締役会にて決議した分の自己株式取得総額は800億円となりました。(取得期間は2020年10月~2021年4月)
